91. Like a Rolling Stone ライク・ア・ローリング・ストーン

Like a Rolling Stone ライク・ア・ローリング・ストーン : Bob Dylan ボブ・ディラン


Alubm : Highway 61 Revisited
Highway 61 Revisited
  ベスト・オブ・ボブ・ディラン
ベスト・オブ・ボブ・ディラン

Released: 1965
Written by: Bob Dylan (ボブ・ディラン)
Produced by: Tom Wilson (トム・ウィルソン)

  ボブ・ディランについて:
Bob Dylan
 フリー百科事典『ウィキペディア』  

 ボブ・ディランはローリング・ストーンズと並んで半世紀近いキャリアがあり、しかもいまだに現役で数多くのヒット曲があります。 今回はその中でもディランを代表する曲であると同時に、大きく路線変更して物議を醸した問題作を採り上げてみました。

 最初はアコースティック・ギターとハーモニカの弾き語りで登場したボブ・ディランでしたが、この曲の頃を境にフォーク・ロックと呼ばれるスタイルに変わって行きます。 現在ではフォークとかロックというジャンルは単なるカテゴリーに過ぎませんが、当時ニュー・フォークと呼ばれた人たちは音楽でメッセージを伝える知識層の代表みたいなところがあり、ロックのように単に踊るためのうるさい音楽はガキのものとして馬鹿にされる傾向がありました。 つまりフォーク・ソングのファンは、自分たちの方がロックより高尚だという意識があった訳です。

 そんな中で「フォークの神様」と崇(あが)められていたボブ・ディランが、エレクトリック・ギターを手にバックバンドを従えてステージに立ったのですから聴衆からは大ブーイングが巻き起こりました。 この年はザ・バーズがディランのミスター・タンブリンマンを歌ってヒットさせ、フォーク・ロックと呼ばれるジャンルが登場した年でもありました。
 ボブ・ディラン自身はハイ・スクール時代、エルヴィス・プレスリーに憧れてバンドをやったり、リトル・リチャードと共演することが夢だと語る普通の若者でした。 表現したいものによって道具を選ぶのは当たり前のことなのですが、そうした変化を恐れる人はマンネリになってその時代で終わってしまうものです。

 この曲は1965年の6月15日にレコーディングされていますが、印象的なハモンド・オルガンを弾いているアル・クーパーが最初にスタジオで演奏したのがこの曲ということになっています。
 当時まだ21歳だったアル・クーパーに演奏予定はなく、ただプロデューサーのトム・ウィルソンのゲストとしてギターを持ってスタジオの中で座っていました。 でもギタリストのマイク・ブルームフィールドがギターを弾き始めるとスタジオから押し出される形になり、そこへトム・ウィルソンが戻ってきてキーボードのポール・グリフィンをオルガンからピアノへと移動させます。 
 オルガンが空いたのを見たアル・クーパーは自分に弾かせてほしいと願い出ます。 プロデューサーのトム・ウィルソンは最初馬鹿にしたような顔をしたらしいのですが「ノー」とも言わなかったようで、そして実際にオルガンを演奏するアル・クーパーを見て驚いたトム・ウィルソンはレコーディングへの参加を許可しました。 
 そしてその録音テープの再生を聴いたボブ・ディランは、「アル・クーパーはオルガン・プレイヤーではないから」というトムの話も聞かず、アル・クーパーのオルガン・プレイを採用します。 直感を信じる人だったのでしょう。

 その一月後の7月20日にこの曲のシングル・レコードが発売されますが、当時は3分前後が一般的だった業界にあって、6分という長い曲をコロンビア・レコードは一旦退けました。 でも新しくプロデューサーになったボブ・ジョンストンはともかくこの歌を発表したのです。 そしてこの曲はその長さにもかかわらず、当時チャートで1位だったビートルズの「ヘルプ」に次ぐ2位の大ヒットとなりました。

 そしてその5日後の7月25日のニューポート・フォーク・フェスティバルのステージに立ったディランは、マイク・ブルームフィールドのバンドをバックにこの曲を含む3曲を演奏します―というより大ブーイングが起こり、3曲しか演奏できませんでした。 当時の保守的なフォーク・ファンからは、裏切り者のように思われたのでしょう。

 その後のワールド・ツアーでも同じように 「Judas!」 (ユダ=裏切り者)という罵声が飛び交う中で、ボブ・ディランは "I don't believe you. You're a liar!" (俺はお前らなんか信じない、お前らは嘘つきだ!)と聴衆に向かって叫び、バックを務めていたザ・バンドのメンバーに "play fucking loud." (ものすげェデカイ音でプレイしろ)と言ってこの曲を歌い始めました。 怒涛のような演奏が終わって放心状態となった聴衆から、やがて歓声が沸き起こると、ディランは一言 "Thank you" とだけ言ってステージを後にしたとか。

 そしてそのどちらが正しかったかは、44年後の現在では言うまでもないことでしょう。

● Like a Rolling Stone 『ライク・ア・ローリング・ストーン』を聴く: (6:10)
(※自動的に再生が始まらない時は、上にある「PLAY」をクリックしてみて下さい)

 それから30年後の1995年にローリング・ストーンズが Stripped(ストリップド)
Stripped
というアンプラグド・アルバムでこの曲のカヴァーをしています。 やりたがっていたのはミック・ジャガー1人で他のメンバーはあまり関心を示さなかったらしいのですが、いざやってみるとそこはストーンズで荒っぽいサウンドも健在。 「俺たちにピッタリだろ?」―とはミックの言ですが、そういえばローリング・ストーンズのテーマ曲みたいにも聴こえますね。 最初の歌詞をちょっと間違えて、同じフレーズを二度繰り返していますが・・・

        The Rolling Stones の 『Like a Rolling Stone』 を聴く:

  ●歌詞と訳詩●

Once upon a time  ずっと以前
You dressed so fine   あんたはきれいに着飾って
You threw the bums a dime   あんたは浮浪者たちに ダイム(10セント硬貨)を投げてやり
In your prime   得意げだった
Didn't you ?   そうだろ?
People'd call, say   みんなが言ってた
"Beware doll, you're bound to fall"   「気をつけな、お嬢さん、今に転げ落ちるから」って
You thought they were all kiddin' you   あんたは 彼らがからかっていると思ってた

You used to laugh about   あんたはいつも 笑い飛ばしていたね
Everybody that was hangin' out   周りの取り巻き連中を
Now you don't talk so loud   今のあんたは 大きな声で話さない
Now you don't seem so proud   今のあんたには プライドもない
About having to be scrounging   探し回らなきゃ ならないからな
For your next meal   あんたの 次の食い物を

How does it feel ?   どんな気がする?
How does it feel ?   どんな気分だい?
To be without a home   生きるべきにも 家は無く
Like a complete unknown   まるで 誰にも知られずにいることは
Like a rolling stone ?   まるで(人に蹴られて) 転がる石ころみたいだろ?

You've gone to the finest school   名門校に通っていたよね
All right, Miss Lonely   そうだろ、ミス・ロンリー ※
But you know    でも やっと判っただろ
You only used to get, juiced in it   あんたはただ、「搾り取られる」ために通ってたんだ
And nobody has ever taught you    そして誰も そこでは教えてくれなかった
How to live on the street   路上で生活する 生き方なんて
And now you find out   そして今となっては 自分で見つけなきゃならない
You're gonna have to get, used to it   あんたの生き方を、 それに慣れるしかないんだ

You said you'd never compromise   「妥協なんてするものか」って あんたは言ってた
With the mystery tramp   得体の知れない浮浪者と一緒になってみて
But know you realize   今はあんたも 実感しただろ
He's not selling any alibis   奴はアリバイなんて (売る)必要がないことを
As you stare into the vacuum of his eyes   奴の空っぽな目の中を のぞき込んで
And say, do you want to make a deal?   こう言ってみな、「お望みなら取引きしない?」って

How does it feel ?   どんな気がする?
How does it feel ?   どんな気分だい?
To be on your own   自分独りで生きることが
With no direction home   家がどこにあるかも判らなくて
Like a complete unknown   まるで 誰にも知られずにいることは
Like a rolling stone ?   まるで(蹴られて) 転がる石ころみたいだろ?

You never turned around to see   あんたは振返ろうとももしなかった
The frowns on the jugglers and the clowns  (お抱え)道化師や曲芸師たちが眉をひそめても
When they all come down   奴らが近寄って来た時
And did tricks for you   あんたをだまそうと
You never understood   あんたは まだ判らなかった
That it ain't no good   それが まずいことだって
You shouldn't let other people   あんたは他の奴らに そうさせるべきじゃなかった
Get your kicks for you   あんたを 好き勝手にさせることを

You used to ride on the chrome horse   あんたはクローム(メッキ)のバイクにまたがってた※
With your diplomat   あんたの外交官と一緒に
Who carried on his shoulder a Siamese cat   肩にシャム猫を乗せて 連れまわしていた奴さ
Ain't it hard when you discover that   つらかっただろう あんたがそれに気付いた時
He really wasn't where it's at   奴がいるべき所から 姿をくらましたのは
After he took from you   あんたから 持ち去った後のことだった
Everything he could steal   奴が盗める全ての物を

How does it feel ?   どんな気がする?
How does it feel ?   どんな気分だい?
To be on your own   自分独りで生きることが
With no direction home   家がどこにあるかも判らなくて
Like a complete unknown   まるで 誰にも知られずにいることは
Like a rolling stone ?   まるで 転がる石ころみたいだろ?

Princess on the steeple and   尖塔の上のプリンセス(お姫様)と
All the pretty people   全てのきれいな連中は
They're drinkin', thinkin'   酒を飲んでは考えて
That they got it made   それがうまくやれたと思ってる
Exchanging all precious gifts   高価な贈り物を交換しあって
But you'd better take your diamond ring   でもあんたの ダイヤの指輪は外した方がいい
You'd better pawn it, babe   質屋に入れた方がいい、ベイブ(お嬢ちゃん)

You used to be so amused   あんたもそれまでは うんと楽しんだだろう
At Napoleon in rags and   ボロ着のナポレオンと
The language that he used   彼が話していた言葉を
Go to him now, he calls you    彼のところへ行けよ、奴が呼んでるぜ
You can't refuse   あんたは断れないだろ
When you got nothing   あんたが 何も持っていない時
You got nothing to lose   あんたは 何も失うものはないんだ
You're invisible now   今のあんたは 誰にも見えないから
You got no secrets to conceal   秘密を隠す必要もないだろ

How does it feel ?   どんな気がする?
How does it feel ?   どんな気分だい?
To be on your own   自分独りで生きることが
With no direction home   家がどこにあるかも判らなくて
Like a complete unknown   まるで 誰にも知られずにいることは
Like a rolling stone ?    まるで 転がる石ころみたいだろ?


※ Miss Lonely : ヒット曲「ミスター・ロンリー」のもじりでしょう。
※ chrome horse :アメリカではモーター・バイクを Iron horse (鉄の馬)と呼んだりする。 
クロームはクローム・メッキでピカピカのマシンということでしょう。

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テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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こんばんは。
mionaでコメントさせてもらっていたのですが、他所で同じHNの方を見かけましたので、
「ミオ」で、よろしくお願いします。

44年も前の曲とは思えない、新鮮さすら感じる曲ですね。
一度聞いたら忘れないメロディーです。ちょっと歌いにくいですけど。^^
いつの時代も新しい世界を開く人は、打ち破らなければいけない壁があるんですねぇ・・・。
尊敬します!

ミオさん、こんにちは。 短いハンドル・ネームだと同じ人もいるでしょうが、このブログにコメントする人で同じ名前が無いのであれば、別に気にすることもないでしょう。

私は生ギターだけで歌っていた時のボブ・ディランはそんなに好きではなかったのですが、この曲がラジオから聞えて来た時には一度で惹き付けられました。 何しろあの歌い方ですから、一緒に歌うにはまったく適しませんが・・・

他にも紹介したい曲は色々あるのですが、何しろ難解で訳しにくい歌詞が多いと言うだけでなく、一緒に歌うのにも向きませんから、本人の歌は今のところこれだけです。 カヴァー曲は「ザ・バンド」や「ザ・バーズ」でも採り上げていて、そちらの方が歌いやすいでしょう。

No title

先日はコメントまでいただきありがとうございました。
調子に乗って、今回もご紹介させていただきました。
ありがとうございました。

sarnoさん、こんにちは

古い記事はコメントでも付かないと開くことがないのですが、おかげさまでリンク切れになっていた曲を修正できました。

今日は久々にこの曲を聴いてみましたが、やはり時代の流れを変えた曲は今聴いても説得力があります。

No title

僕が初めて買った洋楽CDはボブ・ディランのベストアルバムでした。
風に吹かれてを小田和正さんが歌ってて、それで買ったのです。

10年前、高校生の僕にはこの曲はよくわかりませんでした。
英語もしてなかったので、聞き取れないし。
そもそもポップ慣れした耳には難しい。
でも偉大なロックソングのベスト1に選ばれたりしてるし。
ますます分からない。

このブログで歌詞を見ながら再度聞いてみて好きになりました。
浮浪者と取引って何するんだろう?
結構きわどい歌詞だったんですね。

(ボブ・ディランは数曲解説されているようですが、
Modern times収録のWorkingman's blues#2が聞きたいです、
と無茶なリクエストを書いておきます。)

Re: No title

> 10年前、高校生の僕にはこの曲はよくわかりませんでした。
> 英語もしてなかったので、聞き取れないし。
> そもそもポップ慣れした耳には難しい。
> でも偉大なロックソングのベスト1に選ばれたりしてるし。
> ますます分からない。

それが正直な感想でしょう。
ボブ・ディランはあのだみ声だし、歌詞だって日本人には訳が無いと分からないから、好き・嫌いの分かれる人です。
私だってフォーク時代のディランは他の人のカヴァーの方が聴きやすかったし、ディランを聴くようになったのはバック・バンドを従えてロックし始めたこの曲からでした。
昔の人は、自分が若かった頃の曲をベスト・ソングに選ぶことが多いけれど、そうした周りの声に惑わされずに、自分の耳で聞いて素直に良いと思う曲を聴いていれば良いと思います。

> このブログで歌詞を見ながら再度聞いてみて好きになりました。
> 浮浪者と取引って何するんだろう?
> 結構きわどい歌詞だったんですね。

ボブ・ディランの歌詞には難解で意味不明なものが多いので、人によって解釈の仕方がまちまちです。
またそれを難しく解釈して「俺はディランを分かっている」―といった人たちが大勢いるので、こうして訳詞を載せると大抵はクレームが付きます。
「文句あるなら自分で訳せ」―というのが私の答えですが・・・

> (ボブ・ディランは数曲解説されているようですが、
> Modern times収録のWorkingman's blues#2が聞きたいです、
> と無茶なリクエストを書いておきます。)

このブログでも時々マイナーな曲を採り上げることがありますが、まずコメントが付かず、そんな曲ばかりやっていると益々見に来る人が減りそうなので、ボブ・ディランの曲を採り上げるにしても一般の人が聴けそうなこうした曲を選んでやっています。
ボブ・ディランやビートルズなどはそれ専門でやっているブログが幾つかありますから、そちらの方を探してみて下さい。

No title

ディランって最近の曲に英詞載せてないんですよね。
調べれば出てきますし、
一応日本語訳自体は持ってるのですがピンとこない。
(このLike a~も日本語訳は見てましたがピンとこなさは同様です)
Sumi Haruoの訳に惚れてわがまま言ってしまって申し訳ないです。
プロフィール

Sumi Haruo

Author:Sumi Haruo
昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
※記事へのリンクは自由ですが、対訳はあくまでも私個人の解釈なので、訳詞の転載はお断りいたします。
訳詞を掲載したい場合は、記事へのリンクを貼るという形にして下さい。

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