73. Amazing Grace アメイジング・グレイス

Amazing Grace アメイジング・グレイス : Christian hymn 賛美歌


 Amazing Grace について:(フリー百科事典『ウィキペディア』)
 アメイジング・グレイスは1772年 John Newton (ジョン・ニュートン)によって歌詞が書かれ、1779年に賛美歌として印刷されたのが最初のようです。 その後教会で歌われるようになりますが、多くの賛美歌がそうであるように作曲者ははっきりとしません。

 1835年に書かれた楽譜が残されていて、音楽はアメリカ南部のトラディショナル・ソングがベースになっているようで、アレンジメントに William Walker (ウィリアム・ウォーカー)という人の名前が挙がっています。 そうやって少しずつ手を加えられながら現在の形になったのでしょう。
 スコットランドやアイルランドの民謡がベースになっているという説もあり、バグパイプで演奏される曲も人気があります。

 作詞者のジョン・ニュートンは二十代の頃は奴隷船の船長でしたが、嵐で難破しかけた時に初めて真剣に神に祈ったところ奇跡的に助かって、のちに悔い改めて牧師となり、この歌が生まれたということです。
(詳しいエピソードは、上のリンクを開いて下さい)

 この歌は1830年代に Cherokee (チェロキー:アメリカの先住民族)の人たちがゴールド・ラッシュのために居住地を追われ、強制移住を余儀なくされた「涙の旅路」(約8千人が亡くなった)の間、慰めの歌ともなりました。

 歌詞については オリジナルが1番~6番 まであり、1910年に "Uncle Tom's Cabin" (アンクル・トムの小屋)からの引用で、7番目の歌詞が付け加えられました。
 1~3番までは大体同じですが、長い歌なのでそれ以降は省略して7番を歌って終わったり、また1番に戻ったりと、歌う人によってまちまちです。

 録音については1920年頃から行われていたようですが、音楽産業の商用レコードとしては1947年の Mahalia Jackson (マヘリア・ジャクソン)あたりから一般に広まったようです。 この歌はアメリカ国歌と同じくらい色々な人が様々な場面で歌っており、とても全部は調べていられませんが、このところ女性シンガーが少なかったので(50年代は皆無)女性中心に並べてみました。



●1947年 Mahalia Jackson (マヘリア・ジャクソン) : 初代"Queen of Gospel Music"(ゴスペル音楽の女王)と呼ばれたマヘリア・ジャクソンは1971年に来日公演を行っています。 1番の歌詞だけの短い歌ですが、62年前の音がこうして聴けるだけでも大したものでしょう。
 アルバム:Amazing Grace [Best of]
Amazing Grace
 / 音楽を聴く: 2:20

●1970年 Judy Collins (ジュディ・コリンズ) : この人がセント・ポール教会で歌ったこの曲はアメリカのビルボードで最高15位になっただけでなく、イギリスでも67週間チャート・インしたそうですから、この人によって一般的になったとも言えるでしょう。
 イギリスでは Alice's Restaurant (アリスのレストラン・1969年)という映画から「アメイジング・グレイス」が知られるようになったそうだから、やはりこの頃から急速に広まったみたいです。
 ヒラリー・クリントンがこの人のファンで、ビル・クリントン大統領の就任式でジュディ・コリンズは「アメイジング・グレイス」の他に「Chelsea Morning」(チェルシーの朝)を歌っていますが、「チェルシー」はこの曲が好きだったヒラリー夫人が娘に付けた名前だったとか。
 アルバム:Whales & Nightingales
Whales & Nightingales
 / 音楽を聴く: 4:09

●1972年 Aretha Franklin (アレサ・フランクリン) : “レディ・ソウル” アレサ(アリーサ)・フランクリンの、二日間にわたる教会でのセッションを収録した二枚組みアルバムに収録されていたものです。 アリーサの歌もすごいけど、オーディエンス(聴衆)との掛け合いも素晴らしい。 最も売れたゴスペル・アルバムの一つであり、発売と同時にビルボードのトップ10に入るほどの人気だったレコードの、これは再発CDです。
 アルバム:Amazing Grace: The Complete Recordings
Amazing Grace
 / 音楽を聴く: 10:49

●1985年 Joan Baez (ジョーン・バエズ) : ジョーン・バエズは60年代のフォーク・ソング・ムーブメントの中心的存在でした。 この曲は'85年ライヴエイドのフィラデルフィア会場でのオープニングで歌われたものとのことですが、歌詞を一つずつ教えながら歌うのはフォーク・ソングの集会でよくやっていたことで、曲は知っていても歌詞をよく知らない人がアメリカでも多かったということなのでしょう。
 アルバム:Joan Baez - Greatest Hits
Joan Baez - Greatest Hits
 / 音楽を聴く: 4:25

●1999年 Anne Murray (アン・マレー) : アン・マレーはカナダの国民的女性歌手です。 二十世紀も終り近くになってカナダの人も歌うようになった―という訳でもないでしょうが、同じ英語圏でお隣(北)の国ですし、ゆったりした歌い方で一緒に歌うにも歌いやすいと思います。
 アルバム:What a Wonderful World: 26
What a Wonderful World
 

●2003年 Hayley Westenra (ヘイリー・ウェステンラ) : ニュージーランドの人で、当時まだ16歳でした。 2003年に日本のTVドラマのエンディング曲として使われたので、日本人には一番なじみがあるかもしれません。 アルバムも日本版しか手に入らないというところも日本での人気を裏付けていて、白血病で亡くなった本田美奈子とバーチャルでデュエットしている曲も収められています。
 アルバム:永遠のピュア・ヴォイス~ヘイリー・ベスト
ヘイリー・ベスト
 / 音楽を聴く: 3:42
4番~6番の歌詞は飛ばしているみたいですが、この人の発音は少し聞き取りにくいです。

●2008年 Sarah Brightman (サラ・ブライトマン) : サラ・ブライトマンはイギリスの人です。 この人も日本で人気があるし、かわいらしい声なのでゴスペルの人たちよりも一般向けで聴きやすいと思います。
 歌詞は1番からいきなり6番に飛んで、それから3番で終わるという変則的な並べ方で、 こうして聴き比べてみると初期の「アメイジング・グレイス」とはだいぶ違っているのが判るでしょう。 
 アルバム:Winter Symphony(冬のシンフォニー)
冬のシンフォニー
 

インストゥルメンタルの「アメイジング・グレイス」

●1972年 Royal Scots Dragoon Guards (ロイヤル・スコッツ・ドラゴン・ガーズ) : イギリスのバグパイプ・バンドで、この曲はビルボードで11位まで上がるヒットを記録し、アルバムは全世界で700万枚を売り上げたとのことです。 スコットランド民謡がベースになったという説も、こうして聴いてみると何となく分かるような気がします。
 アルバム:Highland Cathedral
Highland Cathedral
 / 音楽を聴く: 3:34

●1997年 : 最後にギタリストの Jeff Beck (ジェフ・ベック)が弾く 「アメイジング・グレイス」 をお楽しみ下さい。 "Love is Blue"(恋はみずいろ)とか、この人時々こうしたポップな曲をやりますが、歌わないギタリスト(たまに歌うけど・・・)がこのブログに登場することは無さそうなので、この機会に取り上げてみました。 本人のアルバムではなく、コンピレーション・アルバムからの選曲です。 
 アルバム:Merry Axemas: A Guitar Christmas
A Guitar Christmas
 / 音楽を聴く: 3:14

 他にも Elvis Presley , Johnny Cash , Bryan ferry , Willie Nelson , Rod Stewart , Louis Armstrong , Glen Campbell ... などなど、
音楽共有サイトのGrooveshark だけでも色々な人の名前が出てきます。 興味があれば探してみて下さい。

オムニバス・アルバム: 「アメイジング・グレイス」だけを集めたオムニバス・アルバムも色々と出ています。 画像がリンクになっているので、クリックして開くとどんな人が入っているのか分かります。 複数のアルバムに収録されダブっている人もいて、白鳥英美子(元トワ・エ・モア)はどのアルバムにも入ってますね・・・
  


 ↓歌詞と対訳は、下の「続きを読む」のリンクをクリックして下さい。 

  ●歌詞と訳詩●


[1] Amazing grace   アメイジング・グレイス(驚くべき 神の恵み)
How sweet the sound   何と優しい響きだろう
That saved a wretch like me   それは私のような 哀れな者さえ救ってくださった
I once was lost   かつては道に迷っていた私を
but now am found   今は教え導いてくださり   
Was blind   (かつては)明き盲目(めくら)も同然だったのに
but now I see   今は(心の目を) 明(あ)けてくださったのだ

[2] 'Twas(It was) grace      その神の恵みこそ
that taught my heart to fear   私の怖れる心を 教え諭して
And grace my fears relieved   そして恩恵は 私の怖れを救ってくださった
How precious did that grace appear   その恵みが現れた時の 何と尊かったこと
The hour I first believed   私の最初の信仰が始まった時の

[3] Thro'(Through) many dangers   これまで多くの危険があり
Toils and snares   骨折りや誘惑があったが
I have already come   私がここまで来られたのは
'Tis(It is) grace      神の恵みがあったからだ
hath (=has) brought me safe thus far   ここまで私を安全に導いてくださり
And grace will lead me home   その恵みは 私を(安息の)地へと連れて行ってくださるだろう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[4] The Lord has promised good to me   主(しゅ)は私に 善きものを約束された
His word my hope secures   その御言葉が 私の希望の保障であり   
He will my shield and portion be   主は私の盾となり、私の一部ともなろう
As long as life endures   この人生の続く限り

[5] Yes, when this flesh and heart shall fail   そう、この肉体と心が衰えて
And mortal life shall cease   長い人生が終りを告げる時
I shall possess   私は手に入れるだろう
Within the veil   (死者の)ベールに包まれながら
A life of joy and peace   歓びと安らぎの 生命(いのち)を

[6] The earth shall soon dissolve like snow   この大地が雪のように溶けて
The sun forbear to shine   太陽が輝きを抑えても
But God, who call'd me here below   でも、私をこの世から (天国に)召された神は
Will be forever mine   永遠に私のものと なってくださるだろう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[7] When we've been there   そして 私たちがそこ(神の御許)で過ごす
Ten thousand years   一万年の歳月も
Bright shining as the sun   明るく輝く太陽のように
We'll have no less days   私たちは日々を無駄にすることなく
To sing God's praise   神を讃えて歌う
Than when we first begun   私たちが 最初に始めた時のように

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テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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浄土真宗という、ある意味 wretch の救いをテーマとする
宗派の僧侶であるせいもありますが、
この歌こそ、南無阿弥陀仏 の味わいがもっともある歌だと
ずっと思っています。

それは、ブログのご文章でご紹介いただいたように、
ジョン・ニュートン(作詞者)が奴隷船の元船長にして難破に遭い、
(実はその後も16年間は奴隷商人の仕事は続けるのですが・・・)
牧師に転職したという経歴、(奴隷商人から聖人に)
も密接だと思うのですが、
これほど懺悔と感謝が混じり合って溶け合った歌は
他に浮かびません。

私も、近いうちにこの歌についてのブログ記事を書いてみたいと思います。
その時はトラックバックをしたいと存じますので、どうか
ご承認をお願いします。

BYマーヒー


マーヒーさん、こんにちは。

奴隷船の話についてはリンクしたページに詳しく書かれているので、ここでは簡単な説明だけにとどめました。 同じ文章を書き写すだけの編集作業が目的ではなくて、あくまでも歌を聴いてもらうことがメインですから。

この曲はいつか取り上げてみようと思っていたのですが、いざ始めてみると色んな人が歌っているのでまとめるのに苦労しました。
今回は女性シンガーに絞ったのですがそれでも結構ありますし、ジャニス・ジョプリンなど音源が見つからなくてあきらめた人もいます。 
ここに紹介した人たちだけでもオムニバス・アルバムが作れそうですけどね・・・

歌詞の翻訳については不信心者の私には荷が重過ぎて、たぶんおかしな直訳になっていることでしょう。 他の人の記事も読んでみたいので、トラックバックお待ちしております。

いえ、おかしな直訳ではなく、これは他の曲でも感じますが、
原意(主に英語、ラ・バンバはスペイン語でしたが) に忠実で
ありながら日本語として詩的な要素も充分に取り入れられている
素晴らしい訳だといつも感心しています。

ただ、blind について、たとえば私の母も身体的に blind なのですが、
変に身体障害者に気を使ったヘンな言い替えをせよというのではなく、
「見ようともしなかったものが見えてきた」 また、立場を変えると
「何も見ることができなかった闇を照らしてくれるものがあった」
というような思いを込めたものを推考していただけたなら、
さらに素晴らしいものになると存じます。

BYマーヒー

"blind" については良い言葉が思いつかなかったのですが、心の目が開かれる訳ですから「明きめくら同然だった」―としておきました。
「目の不自由な人」―という変な表現はかえって失礼に当たると思うので使いません。

マーヒーさんならどんな訳し方をするのか、楽しみにしております。

こんにちは。

早速お訪ねしたらアメージンググレース。

実は息子の結婚式の時
私の三人の娘達がアカペラで歌って、主にある結婚を祝った歌です。
その三人のうちの一人(同居していた娘)は今は天国です。

5番6番7番はまさに娘が召される時の様子そのものです。
良い訳をありがとうございました。

school-t3 さん、こんにちは。

この曲は「洋楽」と言えるものではないかもしれませんが、一度採り上げてみたいと思っていました。
色々な人たちによって歌われていますし、人によって解釈の仕方も様々ですから。

自分よりお子さんの方が先に逝ってしまうというのは、普通に暮らしていると考えにくいものでしょうね。
うちの母は90歳になりますが、若い頃の苦労はすっかり忘れてのんびり生きています。
半分は既に夢の中で生きているようなものなので、仕合せな老後と言えるかもしれません。

こんばんは。
日本では白鳥英美子さんのヴァージョンでよく知られるようになったようですね。ジュディ・コリンズのヴァージョンが一般的に人気が高いと思われますが、ナナ・ムスクーリのヴァージョンも発音が美しくて聴きやすく甲乙付け難いところです。
この曲はエルヴィス・プレスリーやジョニー・キャッシュといった御大のアーティストに好んで取り上げられているようですが、少々変わったところではジョナサン・リッチマン&モダン・ラヴァーズやダニエル・ラノワらの録音もありました。

Backstreets さん、こんにちは。

この曲を歌っている人を紹介するとなるとキリが無いので女性に絞ってみたのですが、とても全部は紹介しきれないので音楽共有サイトで見つかるものを並べてみました。
どれが良いというより好みの問題もありますから、なるべく色んなタイプの人と時代で幅広く採り上げてみましたがいかがでしょうか?

本来は賛美歌ということですが、これだけポピュラーになってしまうともう何でもありですね・・・
一応洋楽ブログということで、日本人の歌は割愛しました。

ようやく 「南無阿弥陀仏とアメイジンググレイス」 のテーマで
11本のブログ記事と1本の実演動画記事を、今年は1番の歌詞に
絞ってですが、書き上げることができました。

和讃 (わさん) という日本の宗教詩のリズムで訳しました。
もともといろんな解釈が可能な原詩であるとは思いますが、
最初から異端であるとは思いつつ、やってみました。

いい勉強と実験的な試訳のきっかけを与えてくださった
このブログ記事に感謝いたします。

BYマーヒー

マーヒーさん、こんにちは。

外国語の歌詞の解釈は、その背景となっているものも含めて様々な解釈が可能ですが、この記事がキッカケとなってまた別の人の刺激になるのであれば良いことだと思っています。
聖火リレーみたいに、松明(たいまつ)の火が渡された訳ですから。

ではこれからブログ記事にジャンプして、和訳を拝見することにいたします。
プロフィール

Sumi Haruo

Author:Sumi Haruo
昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
※記事へのリンクは自由ですが、対訳はあくまでも私個人の解釈なので、訳詞の転載はお断りいたします。
訳詞を掲載したい場合は、記事へのリンクを貼るという形にして下さい。

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