376. Not Dark Yet ノット・ダーク・イェット

Not Dark Yet ノット・ダーク・イェット : Bob Dylan ボブ・ディラン

1997年のアルバムに先がけてリリースされたセカンド・シングルで、病気で生死の境をさまよっていた頃の心情が色濃く反映されているようです。 この曲を聴いていると、なぜか涙がこみ上げてくるのは私だけでしょうか。


Alubm : Time Out of Mind
/ タイム・アウト・オブ・マインド

Released: August 25, '97 (Album: September 30, '97)
Written by: Bob Dylan
Produced by: Daniel Lanois (ダニエル・ラノワ)
  ボブ・ディラン について:
Bob Dylan
 フリー百科事典『ウィキペディア』

この曲を含むアルバムからは、以前"Make You Feel My Love"(メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ:342回目)を採り上げています。 色々な人がカヴァーすることで少しずつ知られているみたいで、このブログではめずらしくコメントの多い記事になりました。

アルバムのレコーディングは1997年の1月から始められましたが、その春にボブ・ディランは真菌による感染症「ヒストプラズマ症」にかかってしまい、それによって予定されていたヨーロッパ・ツアーはキャンセルされ、耐え難いほどの痛みの中、6月の大半を病院で過ごしていたようです。 その後なんとか回復して退院したディランはのちに、
"I really thought I'd be seeing Elvis soon."
俺はもうすぐエルヴィス(プレスリー)に会うんだと、本気で思った。
―と語っています。
そうした病気による死の予感が、この曲のベースとなっているのでしょう。 シンプルだけど味わい深く、6分半という長さを感じさせません。

1998年の第40回グラミー賞では、"Album of the Year"(年間最優秀アルバム)と、
"Best Contemporary Folk Album"(最優秀コンテンポラリー・フォーク・アルバム) 、
それに"Cold Irons Bound"という曲では、"Best Male Rock Vocal Performance"(最優秀男性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス)を受賞しています。
もっとも全体的にかなり暗いアルバムで、しかも例のダミ声で歌われているので、決して一般向けではありません。



Bob Dylan – guitar, vocals

Additional musicians:
  Bucky Baxter – acoustic guitar, pedal steel guitar
  Brian Blade – drums
  Robert Britt – Martin acoustic guitar, Fender Stratocaster
  Cindy Cashdollar – slide guitar
  Jim Dickinson – keyboards
  Tony Garnier – bass guitar, upright bass
  Jim Keltner – drums

Grooveshark で Not Dark Yet 『ノット・ダーク・イェット』を聴く: (6:29)

  ●歌詞と対訳●

[1]
Shadows are fallin' and I've been here all day
  夕闇が降りてくるけど 俺は一日中ずっとここにいた

It's too hot to sleep and time is runnin' away
   眠るには暑すぎて 時間だけが過ぎ去って行く

Feel like my soul has turned into steel
   俺の心は段々と 冷たくなっていくような気がする ※

I've still got the scars that the sun didn't heal
  太陽も癒(いや)せなかった 傷跡を残して

There's not even room enough to be anywhere
  どこにいても これで充分といえるスペースがない

It's not dark yet but it's gettin' there.
  まだ暗くはないけど そうなり始めてる ※

[2]
Well, my sense of humanity has gone down the drain
  俺の人間性は 排水溝(どぶ)に流れ落ち ※

Behind every beautiful thing there's been some kind of pain
  どれほど美しいものにも 何らかの痛みが伴っていた

She wrote me a letter and she wrote it so kind
  彼女が俺にくれた手紙は とても優しく書かれていた

She put down in writin' what was in her mind
  彼女は書面の中で その胸のうちを綴(つづ)っていたのに

I just don't see why I should even care
  なぜ気にも留めなかったのか 俺にも全く分からない

It's not dark yet but it's gettin' there.
  まだ暗くはないけど でもそれが迫りかけてる

[3]
Well, I've been to London and I been to gay Paris
  俺はロンドンに行き にぎやかなパリにも行ってみた ※

I've followed the river and I got to the sea
   川の流れに沿って下り そして海まで行き着いた

I've been down on the bottom of the world full of lies
  嘘で満ち溢れた世界の 底まで降りて行ったこともある

I ain't lookin' for nothin' in anyone's eyes
  あらゆる人々の目の中に 何も無いことを探すこともない

Sometimes my burden is more than I can bear
  時々俺の荷物は(重すぎて) 我慢の限界を超える時がある

It's not dark yet but it's gettin' there.
  まだ暗くはないけど でもそれが近づいている

(間奏)

[4]
I was born here and I'll die here against my will
  俺はここで生まれ、俺の意思に反してここで死ぬだろう

I know it looks like I'm movin' but I'm standin' still
 俺は動いてる様に見えて 身動きしていないのは分かってる

Every nerve in my body is so naked and numb
  俺の体の全神経は それほどまでに剥き出しで麻痺しているんだ

I can't even remember what it was I came here to get away from
 逃(のが)れるためここへ来たはずなのに それさえ思い出せず

Don't even hear the murmur of a prayer
   かすかな祈りの声さえ もう聞こえなくなってしまった
   
It's not dark yet but it's gettin' there.
  まだ暗くはないけど でもその闇はすぐそこまで迫っている



※ running away: 逃げ出す。逃亡する。
※ turned into..: ~に変わる。~になる。
※ steel: (鋼のように)硬くなる。(苦難に耐えるよう)人を非情にする。
※ (be) getting there :そのような状態になりつつある。 そっちの方向に進んでいる。

※ sense of humanity: 人間性。
※ gay: 現代では「同性愛者」ですが、古典的表現で「陽気な」とか「派手な」とか「のんきな」といった意味もあります。
※ against one's will: ~の意思に反し。 不承不承に。 嫌々ながら。
※ standing still: 静止状態。 じっと立っている。 何もしていない。
※ get away: 逃げる。 逃亡する。
※ murmur: つぶやき声、ささやき声。

テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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No title

ディランの後期(現在)の曲では最も好きな曲です。
ダニエル・ラノワのプロデュースをディランも気に入っていたようですね。
暗い歌詞ですが、叙情性に満ち、ディランのダミ声もスチールギター(?)の柔らかな音色に包まれ、なんとも言えない哀感が全編に漂っていますね。
病気の恐怖との闘いということは初めて知りました。老いることへの恐怖、絶望をストレートに歌っているとばかり思っていました。

Re: No title

この曲は暗くて一般的ではありませんが、好きな曲なので採り上げてみた次第です。
久しぶりに聴いたけどやっぱり良くて、涙が出ました。

こうした曲を採り上げても「多分コメントなんて付かないだろう」―と思いながらやっているので、同じようにこの曲が好きな人がいたことをうれしく思っています。
コメント、どうもありがとうございました。
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Sumi Haruo

Author:Sumi Haruo
昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
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