309. Always Lift Him Up いつも優しく

Always Lift Him Up / Kanaka Wai Wai いつも優しく : Ry Cooder ライ・クーダー

 ライ・クーダー1976年の傑作アルバムから、今回は夏に聴くのにピッタリの、古いハワイアンのゴスペル・ソングを間奏に採り入れたこの曲を選んでみました。


Alubm : Chicken Skin Music
  チキン・スキン・ミュージック
(試聴可)
Released: 1976
Written by: Alfred Reed ("Kanaka Wai Wai" is old Hawaiian song)
Arranged & Produced by: Ry Cooder

  ライ・クーダーについて:
Ry Cooder
 フリー百科事典『ウィキペディア』 

 この曲は、ファースト・アルバムでも採り上げていたアルフレッド・リードの古い曲に、ハワイアンのアレンジを施したものです。 アルフレッド・リードの物語は、「How Can a Poor Man Stand Such Times and Live?」(貧しい男が生きるには/プア・マン:93回目)で紹介していますので、そちらを参照して下さい。

Gabby Pahinui & Atta Isacs ライ・クーダーはこの頃、写真家でもある奥さんのスーザン・タイトルマンがハワイから持ち帰ったギャビー・パヒヌイのレコードを聴いて「鳥肌」を立て、やがてはハワイまで出かけて行ってギャビーたちとセッションをするまでになります。
 この曲を含むアルバムではギャビーたちと2曲をレコーディングしているほか、「ギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンド」のレコーディングにもマンドリンで参加していました。
この曲の間奏に聴かれる「Kanaka Wai Wai」という曲は、ハワイの古いゴスペル・ソングだそうですが、アルバムにライ・クーダー自身の書いた文章が載っているので、その部分だけでも対訳にしてみましょう。

"Always Lift Him Up" is an old song by the West Virginia fiddler and songwriter "Blind Alfred Reed.
「オールウェイズ・リフト・ヒム・アップ」(「いつも優しく」)はウェスト・ヴァージニアのフィドル(ヴァイオリン)奏者であり、ソング・ライターだったアルフレッド”ブラインド”(盲目の)リードの古い曲だ。

I did this tune in "Slack-key" style, and the instrumental section is an old Hawaiian gospel song, "Kanaka Wai Wai", that I learned from "Gabby Pahinui" and "Atta Issacs".
この曲は(ハワイアンの)スラック・キー(チューニングのゆるい)のスタイルで演奏して、(間奏の)インストゥルメンタル部分はギャビー・パヒヌイとアッタ・アイザクスから教わった古いハワイアンのゴスペル・ソング「カナカ・ワイ・ワイ」という曲である。

Many traditional Hawaiian melodies have a gospel quality that puts me in the same frame of mind as Alfred Reed's lyrics - sort of solemn but optimistic.
多くの伝統的なハワイアンのメロディの持つゴスペル(神の福音)の本質は、アルフレッド・リードの歌詞と同じ気分にさせてくれる―ちょっと厳粛で、それでいて楽天的な気分にね。

Bobby King, Terry Evans and Herman Johnson, an ordained minister, really carry that feeling.
(コーラスの)ボビー・キングとテリー・エヴァンス、それにハーマン・ジョンソン、―この人は牧師でもある聖職者だ―、(彼らは)見事にその(ゴスペルの)フィーリングを吹き込んでくれた。

 ギャビー・パヒヌイは雑誌のインタビューで、ライ・クーダーとセッションするようになったきっかけを語っています。
 「最初は、奴は俺のファンだった。で、いい奴だったんで、仲間にも紹介したんだ。その時は、一緒にプレイするなんて思ってもみなかった。ところがいつまで経っても、奴は俺から離れないんだ。 家までついてきて、じっと座って俺のギターを聴いてるんだよ。 そしてある日、突然スラック・キーを弾き出したんだ。 その時点で、既に完璧だったね。 そしてアイザクスを呼んでレコーディングをしたんだ。」 (「Switch」Vol.6 No.2 1988. 4.)

 ちなみに「スラック・キー」とは「キーがゆるい」ということで、たるんだ弦で演奏する奏法のようです。 元々ハワイに牛はおらずギターも無かったのですが、アメリカ本土からやって来たカウボーイたちが牛と一緒に残していったギターを、ハワイの人たちはチューニングの仕方を知らず、たるんだ弦のまま弾いていたのが始まりのようです。

 この曲ではライ・クーダーが自分でスラッキー・ギターを演奏していますが、アルバムの中では7曲目に収録されている "Yellow Roses" (黄色いバラ)と、8曲目の "Chloe" (クロエ)という曲で、ギャビー・パヒヌイのスティール・ギターとアッタ・アイザクスのスラッキー・ギターの演奏が楽しめます。 恋人から黄色いバラが届くのは、ここでは別れの言葉に代えてのことらしく、つまり失恋ソングということです。


Ry Cooder : Electric guitar, Slack-key guitar, Tiple, Lead vocal
Jim Keltner & Milt Holland : Drums
Chris Ethridge : Bass
Bobby King, Terry Evans, Herman Johnson : Vocals

  ●歌詞と対訳●

When a fellow has the blues   ある男が 憂鬱な気分でいて、 ※
and feels discouraged    落ち込んでいるような時
And there's nothing else   いいことなんて 何もなく
but trouble all his life   トラブルばかりの人生で
When he's always grumbled at  いつもブツブツと ぼやいてばかりで
and never happy   楽しいことなんて 何もなく
Living with a scolding, aggravating wife  ガミガミと 口やかましい女房と一緒に暮らして ※

If he's sick and tired of life   彼が人生に うんざりして ※
and takes to drinking   酒に手を出すようになったとしても ※
Do not pass him by,    彼の前を 素通りしたり
don't greet him with a frown   嫌な顔を したりせず ※
Do not fail to lend a hand   手を貸し損(そこ)ねずに ※
and try to help him   彼に 救いの手を差し延べて
Always lift him up   いつも 彼を助け起こしてあげて
and never knock him down   そして 決して打ちのめしたりなど しないように


If he stays out late at night  彼が 夜遅くまで外で過ごしていても、
because he's worried   それは 彼が悩んでいるからで
And because his home is not  それというのも 彼の家というのが
what it should be   (本来)そうあるはずの ものではないからで ※
(it should be)   (そうあるべきはずの)
Have a smile for him    彼に 微笑んであげて
whenever you should meet him   彼と会った時には
It would help him just the right way,  ただそうしてあげるだけで、彼がどれほど救われるか
don't you see    きみにも わかるよね ※

If he gambles when he's in the town or city  彼がどこかの町で ギャンブルをしている時には
Tell him what he ought to do to gain the crown  栄冠を手にするには何をしたらいいか教えて
Lend a hand     (ギャンブルをやめる) 手助けをしてあげて
and do not fail to show him pity  同情を示しそこなうような ことをしないで、 ※
Always lift him up   いつも 彼を助け起こして
and never knock him down   決して打ちのめしたり しないでおくれ

[instrumental: an old Hawaiian gospel song "Kanaka Wai Wai"]

If he cannot pay his debts   もし 彼が借金を払えず、
and feels disgusted    うんざりした気分でいるとして
If he's blue and doesn't have a word to say  憂鬱になって もう一言も話したくなくても ※ 
Let him know you are his friend   きみが彼の友だちだって 教えてあげて
who can be trusted   (安心して)信頼していい人なのだと 
It would cheer this lonely fellow on his way  それがこの孤独な男を 元気付けるだろう

If he finds it hard for him to keep his family  もし彼が 家族とやっていけないように見えたら
Let a kind word greet his ear when he's around  そばにいる時 その耳に優しい言葉をかけて
Don't say anything at all to make against him  彼を非難するようなことは 何も言わないで ※
Always lift him up   いつでも 彼を助け起して、
and never knock him down   決して 打ちのめしたりしないであげて


If he has no friends    もし彼が 友だちも無く、
and everyone's against him  誰もが 彼に冷たくしているとしても
If he's failed at everything   彼が あらゆることで失敗して、
that he has tried    やったことが (駄目になったとしても)
Try to lift his load,    彼の重荷を 担(にな)えるようにして
to help to bear his burden   その(人生の)重荷に 耐える手助けをしてあげて
Let him know that you are walking by his side  きみがそばにいることを 教えてあげて

And if he feels that all is lost,   彼が全てを失くしたような気分で、
and he is falling    堕ちて行くような思いがしても
Try to place that poor man's feet on solid ground  哀れな男の足を、しっかりと立たせて ※
Just remember -    忘れずにいて欲しいのは、(彼だって)
he's some mother's precious darling  その男の母親にとっては、可愛い息子なのだということ
Always lift him up   いつも 彼を助け起して、
and never knock him down   決して 打ちのめしたりしないで
Always lift him up    いつでも 彼を助け起して、
and never knock him down   そして、決して彼を 打ちのめしたりしないでおくれ


※ have the blues:塞ぎ込んでいる、元気がない、憂鬱である。
※ scolding wife:ガミガミ女房、やかましい女房。
※ aggravating woman:癪にさわる女、腹立たしい女。
※ be sick and tired: ~にうんざりしている。
※ take to drink:飲み癖がつく、酒に親しむようになる、酒を始める、酒飲みになる。
※ with a frown:しかめっ面をして、眉{まゆ}をひそめて、顔をしかめて、渋面を作って、不機嫌な顔で。
※ fail to:~しそこなう。
※ lend a hand:手を貸す、手伝う。

※ It should be: そうあるべきだ。 そのはずだ。 当然のことだ。
※ don't you see: わからないの? (わかるよね)
※ fail to: ~しそこなう。 ~できない。 ~しない。
※ have a word to say: 「耳寄りな話がある」という意味もあります。
※ make against: ~の不利になる。
※ on solid ground: しっかりと根付いている。 その場に立つ。


 記事の編集

テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

No title

Ry cooder のこの曲とても好きです。
久々に歌詞を見ながら聞けました。
明日から仕事またがんばれそうです。
ありがとう!

Re: No title

> Ry cooder のこの曲とても好きです。
> 久々に歌詞を見ながら聞けました。

私もこの曲が好きなので、ヒット曲ではないけれど採り上げてみました。

> 明日から仕事またがんばれそうです。
> ありがとう!

これは苦しんでいる人を励ます曲ですが、優しい気持ちになれますね。
それで元気が出たなら何よりです。
コメント、ありがとうございました。

名訳!

最近ライ・クーダー再発見しまして、mp3でほぼ全アルバムを収録しヘビーローテションしています。今は彼の音楽しか聴けなくなってしまいました。中でもこの曲は温かなライの声とギターと曲調が心癒してくれます。でも歌詞がわからず、ネットを探していましたら貴君の訳詞に出会うことができました。この歌詞を頭に入れて聴くともう泣いてしまいそうです。本当にありがとうございました!

Re: 名訳!

ライ・クーダーは好きなミュージシャンの一人で、このブログでも何度か採り上げています。
特に「チキン・スキン・ミュージック」は大好きで、若い頃はレコードで、CDを買えるようになってからはCDでも良く聴いていました。

コメント、どうもありがとうございます。
訳詞がお役に立ったなら何よりでした。

プロフィール

Sumi Haruo

Author:Sumi Haruo
昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
※記事へのリンクは自由ですが、対訳はあくまでも私個人の解釈なので、訳詞の転載はお断りいたします。
訳詞を掲載したい場合は、記事へのリンクを貼るという形にして下さい。

全記事タイトル表示リンク

全記事タイトルを表示

カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
FC2カウンター
フリーエリア


累計: 検索エンジン登録
本日: SEO対策
昨日: メール配信

アクセスアップ

Mail Form:メールフォーム

リンク
電子書籍
Amazonから電子書籍を出版しました
QRコード
QR
RSSリンクの表示