290. Money, Honey マニー・ハニー

Money, Honey マニー・ハニー : Ry Cooder ライ・クーダー

 今回はライ・クーダーのセカンド・アルバムからの選曲ですが、この頃のアルバムからシングル・カットされた曲は無く、ヒットした曲もありません。 ―というか、元々ヒット・チャートとは無縁な音楽をやっていた人ですから、ヒット曲って特に無かったような気がします・・・


Alubm : Into the Purple Valley
  紫の峡谷
(試聴可)
Released: January 1972
Written by: Jesse Stone
Produced by: Lenny Waronker and Jim Dickinson

  ライ・クーダーについて:
Ry Cooder
 フリー百科事典『ウィキペディア』  

 ライ・クーダーの1st~3rd・アルバムまでは、主にアメリカが不況だった時代の古い音楽を採り上げていて全体的に暗い印象なので、一般の方にはあまりお勧めしません。 私自身、このアルバムを最初に聴いた時にはあまり良いとは思えなかったからです。 でも何曲か引っかかる曲があって、そうした曲から聴いている内に段々と好きになり、やがてアルバム全体を通して聴くようになりました。

 最初に好きになったのが "Teardrops Will Fall" (ティアドロップス・ウィル・フォール)というちょっと寂しい失恋ソングでした。 特にドラムの入り方が好きなので調べたところ "Jim Keltner" (ジム・ケルトナー)という名前を知ったのですが、この人はこのアルバム以降、ライ・クーダーのレコーディングには欠かせない存在となります。 ライ・クーダーには他にも様々な音楽やミュージシャンを紹介してもらいました。

この曲について:
 "Teardrops Will Fall" も良い曲なのでどちらにしようか悩んだのですが、この曲の方がライ・クーダーらしいマンドリンや スライド・ギター の演奏が楽しめるのでこちらを選びました。
 この曲は1953年に "Clyde McPhatter with the Drifters (ドリフターズ)" 名義 で歌われて、リズム・アンド・ブルース部門で1位となった曲で色々な人がカヴァーしています。
その中でも1956年の "Elvis Presley" (エルヴィス・プレスリー)のファースト・アルバムに入っているヴァージョン が有名でしょうか。 ライ・クーダーには他にもドリフターズやプレスリーのカヴァーがありますが、そうした古いヴァージョンと聴き比べてみると演奏やアレンジの斬新さが良く分かるでしょう。

 ライ・クーダーはファースト・アルバムでもウッディ・ガスリーの "Do Re Mi" (ドレミ)というカネにまつわる曲を歌っていて、この曲もまさに「金がすべて」といった歌なのですが、笑ってしまうくらいにコミカルで現実の悲惨さは微塵もありません。 歌の方はお世辞にもうまいとは言えませんが、素晴らしい演奏をお楽しみ下さい。

Ry Cooder : Guitar , Mandolin, vocals
Jim Keltner : Drums
Jim Dickinson : Piano
Chris Ethridge : Bass
Gloria Jones , Donna Washburn , Donna Weiss , Claudia linnear : Voices
(※この曲では女性コーラス隊も参加していますが、誰がどのパートを歌っているのかは分かりません)

アルバム・ジャケットについて:
 ライ・クーダーのアルバムの中でも一番凝っているのがこのセカンド・アルバムのジャケットで、レコードでは上のような見開きになっていました。 このアルバムをレコーディングしていたワーナー・ブラザースのスタジオの隣には、同じワーナーの使われていない映画撮影所があって、撮影はそこで行われています。 年配の職員にセットの中を案内してもらったライ・クーダーは、背景となっているペイントされた古いセットの山を見つけ、そこからこのジャケットのインスピレーションを得たということです。

 黄色のコンヴァーティブル(オープン・カー)は1939年製の Buick (ビュイック) で、ライ・クーダーが近所の人から借り受けて自分で用意したものだとか。 隣にいるのは奥さんのスーザンで、この人はライ・クーダーの写真を撮ったり、「パラダイス・アンド・ランチ」ではジャケット写真の他にペイント(絵)も担当しています。
 二人の着込んでいる服や靴も大体1930年代のものらしく、そこは映画スタジオだから色々あったのでしょう。 雨を降らす装置や照明も映画スタジオならではのもので、昔のハリウッド映画のポスターみたいな仕上がりとなりました。 アルバム・デザインは「Jazz (ジャズ)」などのジャケットも手がけている "Mike Salisbury " で、写真撮影は "Marty Evans" となっています。

Money, Honey 『マニー・ハニー』を聴く:
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

[1]
Well, the landlord rang my front door bell  大家が玄関のベルを鳴らしたけど ※
I let it ring for a long, long spell   俺はずっと、長いこと鳴らさせておいて ※
Went to the window,   窓のところまで行くと、
Peep through the blind,   ブラインド越しに のぞいてから
Asked him to tell me what was on his mind.  彼の胸の内を たずねてみたら

(Chorus)
He said,     彼が言うには、
"Money, honey!   「金(かね)だよ、あんた!
Money, honey!    家賃のことだよ、あんた!
Money, honey,   マニィ、ハニィ
If you wanna stay here with me."  あんたが俺のところに居たいなら」

[2]
I was clean and skinned and so hard-pressed  俺は身ぐるみはがされ、えらく困っちまって ※
I called the woman that I love the best   最愛の女に 電話してみたんだ
Finally found my baby 'bout a quarter-to-three  やっと3時15分前につながったけど ※  
She said,     彼女が言うには、
"I'd like to know what you want with me."  「あんた、あたしにどうして欲しいって言うの」

(Chorus)
I said,    俺はこたえて、
"Money, honey!   「カネだよ、ハネー
Money, honey!   マネーだよ、ハネー
Money, honey,   マニィ、ハニィ
If you wanna get along with me."   お前が俺と いい関係でいたいなら」 ※

(間奏)

[3]
Well, she screamed and said,    彼女は 金切り声を張り上げて、
"What's wrong with you?   「あんた、どうかしたんじゃないの? ※
From this day forth,   今日限りで ※
our romance is through."   あたしたちのロマンス(恋愛)は おしまいよ」
I said,     俺は こたえて、
"Tell me, baby, face to face  「なあ、ベイビィ、直接会って話そうぜ ※
How could another man take my place?"  俺の他に 誰か男ができたのかい?」 ※

(Chorus)
She said,    彼女が言うには、
"Money, honey!   「お金よ、あんた!
Money, honey!   マネーよ、ハネー!
Money, honey,   マニィ、ハニィ
If you wanna get along with me."   あんたがあたしと うまくやりたいのなら」

[4]
I've learned my lesson and now I know  授業で習ったことが 今になってやっと分かったよ  
Sun may shine and wind may blow  日が照る時もあれば 風の吹く日もあるように
Women may come and women may go,   女もやって来ては 去って行くものだって ※   
But before I tell 'em that I love 'em so,  でも俺が奴らに好きだと そう言う前に

(Chorus)
I want,     俺が欲しいのは、
"Money, honey!   「マネーだ、ハネー!
Money, honey!    カネだよ、ハネー!
Money, honey,   マニィ、ハニィ
If you wanna get along with me."  もしお前が 俺とうまくやりたいのなら」


※ landlord: 家主、大家、地主。
※ long spell: "spell" は「しばらくの間」や「ひとしきり」だが、"long spell" だと「長く続く」とか「長い間」くらいの意味。
※ honey: ハニー。 普通は妻や恋人など、愛する者に対する呼びかけだが、ここでは "Money" と "honey" を掛けて韻を踏んでいる。

※ clean and skinned: "clean out" で「すっからかんになる」、「一文無しになる」、 "skinned" は「皮をはがれた」、「すってんてんになった」で、「身ぐるみ剥がされて一文無しになった」ということ。
※ hard-pressed: (時間や金が無くて)四苦八苦している、追い詰められている、えらく苦労している。
※ finally: やっと、ようやく。
※ a quarter-to-three: 3時15分前。
※ get along with: ~と仲良く付き合う、~と良い関係にある、~と調子(歩調)を合わせる。

※ what's wrong with ... ?: ~はどうかしたの?、~はどうしちゃったの? 
※ from this day forth: 今日以降、今後は。
※ face to face: 面と向かって、直接顔を合わせて、直接会って行う。
※ take one's place: ~の後釜に座る、~の後任になる、~の地位を占める。

※ 4番の歌詞のこの辺りは、"now I know" 、 "wind may blow" 、 "women may go" と韻を踏みまくっています。
※ 'em: "them" の略。 

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テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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かゆいところに手が届く構成になっていてとても面白かったです!

先日テレビでCooderの「Great Dream From Heaven」が流れてきて
初めて彼の音楽を聴きました。
そのほかの曲もわからずinto the Purple Valleyを買って聴いてみたら、
好きな曲が多く驚いているところです。

このHoney Moneyもイントロから格好いい!と思い、
曲のことが知りたくて調べていたら、たまたまこちらにたどり着きました。
音楽に感謝です♪

Re: タイトルなし

まさかこんなマイナーな曲にコメントが付くとは思いませんでした(笑)。

> 先日テレビでCooderの「Great Dream From Heaven」が流れてきて、初めて彼の音楽を聴きました。
"Great Dream From Heaven" は、ライ・クーダーが敬愛するバハマのホセ・スペンセがオリジナルですが、インストゥルメンタルのきれいな曲ですね。

> そのほかの曲もわからずinto the Purple Valleyを買って聴いてみたら、好きな曲が多く驚いているところです。
このアルバムを良いと言う人はあまりいませんし、他人にも勧めたりはしませんが、自分では大好きで独りでこっそりと聴いています。

> このHoney Moneyもイントロから格好いい!と思い、曲のことが知りたくて調べていたら、たまたまこちらにたどり着きました。
イントロもいいし、ライ・クーダーお得意のマンドリンの演奏もたまりません。 ひどく現実的な歌なのに、楽しく歌っているところが良いですね。

> 音楽に感謝です♪
私も感謝しております。 コメント、ありがとうございました。
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Sumi Haruo

Author:Sumi Haruo
昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
※記事へのリンクは自由ですが、対訳はあくまでも私個人の解釈なので、訳詞の転載はお断りいたします。
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