205. Fairytale of New York ニューヨークの夢
Fairytale of New York ニューヨークの夢 : The Pogues ザ・ポーグス
これはニューヨークでの成功を夢見たアイルランド移民の男女が、共に夢破れて年老いたクリスマスの物語です。 アイルランドやイギリスではクリスマス・ソングとして人気がありますが、アイルランド移民の歴史や歌詞の内容が分からないと歌の意味が伝わらないでしょうから、日本ではまだ知名度も人気もありません。
ザ・ポーグスはアイルランドの伝統音楽とパンク・ロックが融合したようなフォーク・ロック・グループです。 この曲は彼らにとって最大のヒットとなり、リリースされた年に全英2位となりました。 その後もクリスマス・ソングとして度々再リリースされてその度にチャートを賑わせ、現在ではUKで最も人気の高いクリスマス・ソングの一つとなっています。
タイトルの「Fairy tale」(フェアリーテール)は「おとぎ話」(直訳すると「妖精の作り話」)のことですが、夢破れて貧しく年老いた男女の厳しい現実が描かれています。 でもこうした曲の方がハッピーなクリスマス・ソングよりもずっと心にしみるのですね。 少なくとも私には・・・
この曲を歌っているのはメンバーの Shane MacGowan (シェイン・マガウアン)ですが、デュエット相手の女性シンガーはプロデューサー Steve Lillywhite (スティーヴ・リリーホワイト)の奥さん Kirsty MacColl (カースティー・マッコール)です。 女性ヴォーカルを使ってみたいと思ったスティーヴ・リリーホワイトがメンバーに聴かせてみたところ、ポーグスのメンバーは彼女の声を気に入って歌うことになったとか。 歌の途中には老夫婦が互いに口汚く罵りあう場面がありますが、最後はホロリとさせる結末も用意されたいます。
かつて肥沃なイングランドから追われたケルト民族は、北のハイランド(スコットランド)や西のアイルランド島に逃れ、更に新天地を求めてアメリカに渡っても、やはりイギリス人より悪い条件で働かなければならなかったようです。 歌の中にニューヨーク市警の聖歌隊が出てきますが、「ニューヨークにいるアイリッシュはギャングか警官か消防士になる」―と言われ、それすらできない者はこの歌の男のように酒に溺れギャンブルで身を持ち崩していたのでしょう。
この歌の中には、アイリッシュの歌が二曲出てきます。 一つは泥酔してぶち込まれたトラ箱の中で老人が歌う「The Rare Old Mountain Dew」で、つまりその老人も自分と同じようにアイリッシュで酔いつぶれており、自分の行く末を見る思いがしたことでしょう。
→ ザ・ポーグス自身の歌う 「The Rare Old Mountain Dew」を聴く
もう一つはニューヨーク市警の聖歌隊が歌う 「Galway Bay」 です。 警官にはアイリッシュの人が多かったということで、その人たちが典型的なアイルランドの歌をうたうという訳です。
これには幾つかのヴァージョンがあり、有名なのがアイルランドの女性歌手 Dolores Keane (ドロラス・キーン)の歌うもの。→ Galway Bay(Dolores Keane)を聴く
Bing Crosby (ビング・クロスビー)の歌うヴァージョンも良く知られていて、こちらは歌詞の政治的な部分を少し変更して歌っているようです。→ Galway Bay(Bing Crosby)を聴く
●The Pogues 当時のメンバー:
*Shane MacGowan - vocals, guitar
*Spider Stacy - tin whistle, vocals
*James Fearnley - accordion, piano, mandolin, dulcimer, guitar, cello, percussion
*Jem Finer - banjo, saxophone
*Andrew Ranken - drums, vocals
*Philip Chevron - guitar, mandolin
*Darryl Hunt - bass, percussion, vocals
*Terry Woods - cittern lute, concertina, strings, banjo, dulcimer, guitar, vocals
Grooveshark で Fairytale of New York 『ニューヨークの夢』を聴く: (4:31)
●歌詞と訳詞●
これはニューヨークでの成功を夢見たアイルランド移民の男女が、共に夢破れて年老いたクリスマスの物語です。 アイルランドやイギリスではクリスマス・ソングとして人気がありますが、アイルランド移民の歴史や歌詞の内容が分からないと歌の意味が伝わらないでしょうから、日本ではまだ知名度も人気もありません。
Alubm : If I Should Fall from Grace with God
/ 堕ちた天使
Released: 1987
Written by: Jem Finer, Shane MacGowan
Produced by: Steve Lillywhite
ザ・ポーグスについて:
フリー百科事典『ウィキペディア』
ザ・ポーグスはアイルランドの伝統音楽とパンク・ロックが融合したようなフォーク・ロック・グループです。 この曲は彼らにとって最大のヒットとなり、リリースされた年に全英2位となりました。 その後もクリスマス・ソングとして度々再リリースされてその度にチャートを賑わせ、現在ではUKで最も人気の高いクリスマス・ソングの一つとなっています。
タイトルの「Fairy tale」(フェアリーテール)は「おとぎ話」(直訳すると「妖精の作り話」)のことですが、夢破れて貧しく年老いた男女の厳しい現実が描かれています。 でもこうした曲の方がハッピーなクリスマス・ソングよりもずっと心にしみるのですね。 少なくとも私には・・・
この曲を歌っているのはメンバーの Shane MacGowan (シェイン・マガウアン)ですが、デュエット相手の女性シンガーはプロデューサー Steve Lillywhite (スティーヴ・リリーホワイト)の奥さん Kirsty MacColl (カースティー・マッコール)です。 女性ヴォーカルを使ってみたいと思ったスティーヴ・リリーホワイトがメンバーに聴かせてみたところ、ポーグスのメンバーは彼女の声を気に入って歌うことになったとか。 歌の途中には老夫婦が互いに口汚く罵りあう場面がありますが、最後はホロリとさせる結末も用意されたいます。
かつて肥沃なイングランドから追われたケルト民族は、北のハイランド(スコットランド)や西のアイルランド島に逃れ、更に新天地を求めてアメリカに渡っても、やはりイギリス人より悪い条件で働かなければならなかったようです。 歌の中にニューヨーク市警の聖歌隊が出てきますが、「ニューヨークにいるアイリッシュはギャングか警官か消防士になる」―と言われ、それすらできない者はこの歌の男のように酒に溺れギャンブルで身を持ち崩していたのでしょう。
この歌の中には、アイリッシュの歌が二曲出てきます。 一つは泥酔してぶち込まれたトラ箱の中で老人が歌う「The Rare Old Mountain Dew」で、つまりその老人も自分と同じようにアイリッシュで酔いつぶれており、自分の行く末を見る思いがしたことでしょう。
→ ザ・ポーグス自身の歌う 「The Rare Old Mountain Dew」を聴く
もう一つはニューヨーク市警の聖歌隊が歌う 「Galway Bay」 です。 警官にはアイリッシュの人が多かったということで、その人たちが典型的なアイルランドの歌をうたうという訳です。
これには幾つかのヴァージョンがあり、有名なのがアイルランドの女性歌手 Dolores Keane (ドロラス・キーン)の歌うもの。→ Galway Bay(Dolores Keane)を聴く
Bing Crosby (ビング・クロスビー)の歌うヴァージョンも良く知られていて、こちらは歌詞の政治的な部分を少し変更して歌っているようです。→ Galway Bay(Bing Crosby)を聴く
●The Pogues 当時のメンバー:
*Shane MacGowan - vocals, guitar
*Spider Stacy - tin whistle, vocals
*James Fearnley - accordion, piano, mandolin, dulcimer, guitar, cello, percussion
*Jem Finer - banjo, saxophone
*Andrew Ranken - drums, vocals
*Philip Chevron - guitar, mandolin
*Darryl Hunt - bass, percussion, vocals
*Terry Woods - cittern lute, concertina, strings, banjo, dulcimer, guitar, vocals
Grooveshark で Fairytale of New York 『ニューヨークの夢』を聴く: (4:31)
●歌詞と訳詞●
記事編集
It was Christmas Eve, babe クリスマス・イヴだってのに、ベイビィ
In the drunk tank (酔っ払ってぶち込まれた)トラ箱(泥酔者保護室)の中 ※
An old man said to me, (先客の)年寄りじいさんが 俺に言ったもんさ
"won't see another one" 「他の奴の面(つら)なんぞ 見たくもねぇ」って
And then he sang a song そして そのじいさんが歌い始めたのが(アイルランドの)
"The Rare Old Mountain Dew" 「The Rare Old Mountain Dew」だったので ※
I turned my face away 俺は(同じ境遇の奴から) 顔をそむけて
And dreamed about you そして お前のことを夢見たんだ
Got on a lucky one 当たりが出たぜ
Came in at ten to one 10倍の(配当金の馬)が来たんだ ※
I've got a feeling 何となく いいことがありそう
This year's for me and you 今年は 俺とお前にとって
So Happy Christmas だから 「ハッピー・クリスマス」
I love you, baby 愛してるぜ、ベイビィ
I can see a better time もっといい目が見られそうだ
When all our dreams come true 俺たちの夢が すべて叶う時に
(ここから曲調が変って、女が歌う 今と昔のこと)
They've got cars big as bars あの人たちは バーみたいなデカイ車に乗って ※
They've got rivers of gold 金の(流れる)川でも あるみたいだっていうのに
But the wind goes right through you あんたの身には (冷たい)風が吹き抜けて
It's no place for the old 老いぼれには 居場所も無い有様ね
When you first took my hand あんたがアタシの手を 最初に握った時
On a cold Christmas Eve それは寒いクリスマス・イヴのことだった
You promised me あんたはアタシに 約束したわ
Broadway was waiting for me 「ブロードウェイが きみを待っているんだ」ってね
(男女の デュエット)
You were handsome 『アンタは (かつて)ハンサムだったわ』
You were pretty 『お前だって (以前は)きれいだったよ
Queen of New York City (まるで)ニューヨークの女王だった』
When the band finished playing バンドが 演奏を止めても
They howled out for more 人々は「もっとやれ!」って、叫んで ※
Sinatra was swinging, (フランク)シナトラが スィングすると ※
All the drunks they were singing 酔っ払いたちは みんなで歌っていた
We kissed on a corner 我々は (部屋の)片隅でキスをして
Then danced through the night それから 夜通し踊り明かしたっけ
(Chorus)
The boys of the NYPD choir NYPD(ニューヨーク市警)の青年聖歌隊が ※
Were singing "Galway Bay" 「ゴールウェイ湾」の歌をうたい ※
And the bells were ringing out (教会の)鐘の音は 鳴り響いていた
For Christmas day クリスマスの日を(祝って)
(ここから現実に戻って、老夫婦の口汚い罵り合いになる)
You're a bum 『アンタは(役立たずの) のらくら者 ※
You're a punk アンタなんて くだらないチンピラよっ!』 ※
You're an old slut on junk 『テメーこそ 老いぼれ売女(ばいた)で 人間のクズぢゃねぇか
Lying there almost dead ほとんど寝たっきりの この死にぞこないが
on a drip in that bed ベッドで 点滴打って(何とか生きて)るくせしやがって!』
You scumbag, you maggot 『なにさ悪党、この蛆虫(うじむし)野郎
You cheap lousy faggot アンタなんか ケチでシミだらけのホモ野郎よ!
Happy Christmas your arse 「ハッピー・クリスマス」なんて クソくらえだ
I pray God it's our last 神に祈って、アンタとは もうこれっきりにしてもらうわ!』
(Chorus)
The boys of the NYPD choir ニューヨーク市警の青年聖歌隊が
Were singing "Galway Bay" 「ゴールウェイ湾」の歌をうたい
And the bells were ringing out (教会の)鐘の音は 鳴り響いていた
For Christmas day クリスマスの日を(祝って)
(ここから怒りが鎮まって、しんみりとした互いの本音を語り合う)
I could have been someone 『俺は今と違う 他の誰か(のよう)にも なれたはずさ』
Well, so could anyone 『そう、誰だってそう言うわ
You took my dreams from me アンタが あたしから(女優になる)夢を奪ったのよ
When I first found you あたしが初めて アンタを見かけた時にね』
I kept them with me, babe 『その(夢)なら 俺が(今でも)預かってるよ、ベイビィ
I put them with my own 俺の(夢)と一緒に (大切に)しまってあるさ
Can't make it all alone (俺は)一人じゃ 何もできなかったから
I've built my dreams around you お前のそばで 俺の夢を築こうとしたんだ』
(Chorus)
The boys of the NYPD choir ニューヨーク市警の青年聖歌隊が
Were singing "Galway Bay" 「ゴールウェイ湾」の歌をうたい
And the bells were ringing out (教会の)鐘の音は 鳴り響いていた
For Christmas day クリスマスの日を(祝って)
※ drunk tank :警察の「drunk」(泥酔者)を一時的に収容する「tank」(タンク)の保護室。 「ブタ箱(監獄)」に対して、通称「トラ箱」。(虎とは「のん兵衛」のことを指します)
※ The Rare Old Mountain Dew :アイルランドの古い歌で、「Mountain Dew」はウィスキーの俗語とか。 つまり、そのじいさんも同じアイリッシュで同じ酔っ払いということになる。
※ bars :「bar」には「横木」、「障壁」、「閂(かんぬき)」、「(バーの)カウンター」など色々な意味があるが、bars と複数形になっているので、何となく大きな物としか言えません。
※ ten to one :10対1の確率で、10倍の(主に馬券)が当たったということでしょう。「十中八九」という意味でも使うようですが、仕事の無い人間がやることはギャンブルに酒と相場が決まっています。
※ howl :(犬や狼などが)「吠える」こと。
※ Sinatra :フランク・シナトラのことで、その当時流れていたのは「New York, New York」だろうと、Wikipedia では言っています。
※ NYPD :The New York City Police Department ニューヨーク市警察の頭文字。イギリス人より低い立場のアイルランド移民でも就職できたので、多くのアイリッシュがいたという。「ニューヨークのアイリッシュはギャングか警察官、あるいは消防士になる」と言われていた。
※ choir :聖歌隊 「boys」と言っても警官であれば、ある程度若い「青年」ということでしょう。 実際にはニューヨーク市警に聖歌隊はいないとのこと。
※ Galway Bay : アイルランド西端にある湾の名前で、これも典型的なアイルランドの歌。
※ bum :「浮浪者」、「役立たず」、「のらくら者」。ここから教科書には載らない汚い言葉が続きます。 良い子のみなさんは真似をしないで下さい。
※ punk(チンピラ)とjunk(薬物中毒の廃人)、dead(死)とbed(ベッド)、maggot(蛆虫)とfaggot(ホモ野郎)、arse(【卑】けつ、尻、ass[ケツ]とも)とlast(お終い、発音は「ラス」で「ト」は不要)と汚い言葉が並び、語尾が似た発音の単語を続けて韻(いん)を踏んでいます。