106. Grapefruit Moon グレープフルーツ・ムーン

Grapefruit Moon グレープフルーツ・ムーン : Tom Waits トム・ウェイツ

 今回はしわがれ声の「酔いどれ詩人」、トム・ウェイツの記念すべきファースト・アルバムからの選曲です。


Alubm : Closing Time
Closing Time
  クロージング・タイム
クロージング・タイム
 (試聴可)
Released: 1973
Written by: Tom Waits
Produced by: Jerry Yester
 (Tom Waits: vocals, piano, celeste, guitar)
  トム・ウェイツについて:
 Tom Waits
 フリー百科事典『ウィキペディア』  

 トム・ウェイツは新興レーベルのアサイラム・レコードからデビューしていますが、同じレーベルのイーグルスやジャクソン・ブラウンのようないわゆる「ウエスト・コースト・サウンド」とは無縁で、シングル・ヒットといえるものも特にありませんが、ヒット曲ばかりやっているとたまにはこうした曲も取り上げてみたくなるのですね。 ちゃんとした楽器の音も聴こえますし・・・

 このアルバムはイーグルスもカヴァーしたオープニングの Ol' 55(オール '55)で朝の光と共に始まり、終りの方に収められたこの曲では月明かりと共に幕を閉じます。 アルバム・セールス的には全然売れなかったようですが、バラエティに富んでいてメロディアスな曲が多く演奏も割とポップなので、この曲でトム・ウェイツに興味を持たれた方はアルバムの発売順に聴いてみることをお勧めします。 ―というのも、トム・ウェイツはアルバムを重ねる毎にしわがれ声になり、どんどん個性的になり、音もジャズっぽくなってとても一般向けとは言えなくなってしまうからです。

 セカンド・アルバム The Heart of Saturday Night
(邦題:土曜日の夜)もファースト・アルバムと甲乙付けがたい出来なので、今回はどちらを選ぼうか迷いました。
 4枚目のアルバム Small Change
で初めてアメリカのアルバム・チャート100位以内に入り(89位)、金と名声とバック・バンドを手に入れたトム・ウェイツでしたが、このアルバム辺りから独特のしわがれ声になり、よりジャジーになり(ギター無し)、一般向けとは言えなくなってきます。

 無精ひげを生やし、くわえタバコのトム・ウェイツは写真を撮っても絵になりますが、奔放な生き方が人間の姿をしているところはローリング・ストーンズのキース・リチャーズと重なって見えることがあります。 実際この二人は仲が良く、1985年のアルバム Rain Dogs
(邦題:レイン・ドッグ)にはキースがギターで参加していますし、ストーンズのアルバム「ダーティ・ワーク」にはトムがバック・ヴォーカルで参加していました。

 この「Rain Dogs」(レイン・ドッグ:雨でマーキングの匂いが消えて、家に帰れなくなった迷い犬のこと)に収録されている 「Downtown Train」(ダウンタウン・トレイン)はロッド・ステュワートがカヴァーしてビルボード3位のビッグ・ヒットとなっています。 そういえばロッド・ステュワートは4作目のオープニングに収められている 「Tom Traubert's Blues」(トム・トラバーツ・ブルース)もカヴァーしていましたっけ・・・

 このファースト・アルバムをリリースした時トム・ウェイツは24歳でしたが、4作目のレコーディングに参加することになるジャズ・ドラマーのシェリー・マンは初めてトムの曲を聴かされた時、「こいつは、めちゃくちゃ老けた若者かい? それとも、めちゃくちゃ若い老人なのか?」―とたずねたそうです(笑)。 高校を中退し、ピザ屋の店員などをして働きながら音楽を目指したトム・ウェイツは、めちゃくちゃ老けてくたびれた若者でした。 でもしわがれ声の中に温かさがあるし、共感できる人にとってはとてもハマるアルバムになると思います。 甘味料はゼロで、どちらかというとくたびれた男向きですけどね・・・


Grapefruit Moon 『グレープフルーツ・ムーン』を聴く:

  ●歌詞と訳詞●

Grapefruit moon,   グレープフルーツみたいな月が、
one star shining,   一つの星が 輝いて、   
shining down on me.   その輝きが 俺を照らしている
Heard that tune,   (以前)聴いた あの曲を
and now I'm pining,   今(また聴きたいと) 俺は待ち焦がれている ※
honey, can't you see?   ハニー、判らないかい?

('Cause) every time I hear that melody,   いつも そのメロディを聴く度に
Something breaks inside,   俺の中の 何かが壊れるんだ
And the grapefruit moon,   グレープフルーツみたいな月が   
one star shining,   一つの星が 輝いている
can't turn back the tide.   (海の)潮の流れを 押し戻すことはできないさ

Never had no destination,   決して 目的地など持たず、 ※
could not get across.   越えられないものも無かった
You became my inspiration,   お前は俺の インスピレーションになったけど ※
Oh, but what a cost.   あぁ、でも 何という代価を払っただろう

('Cause) every time I hear that melody,   いつも そのメロディを聴く度に
Something breaks inside,   俺の中の 何かが砕けるんだ
And the grapefruit moon,   グレープフルーツみたいな月が
one star shining,   一つの星が 輝いている
is more than I can hide.   それは 俺が隠せるものより 多い

(間奏)

Now I'm smoking cigarettes   今 俺はタバコをふかしながら
and I strive for purity,   清くあろうと 努めている ※
And I slip   そして俺は 滑り落ちる
just like the stars into obscurity.   丁度 闇へと流れる 星たちのように ※

'Cause every time I hear that melody,   いつも そのメロディを聴く度に
Puts me up a tree,   俺は 木の上に のぼっている ※
And the grapefruit moon,   グレープフルーツみたいな月が
one star shining,   一つの星が 輝いている
is all that I can see.   それが俺に見える すべてさ


※ pine :「思い焦がれる」、「切望する」
※ destination :「目的地」、「行き先」
※ get across :「渡る」、「越える」、あるいは「(考えを)判らせる」、「~と仲たがいする」
※ inspiration :「霊感」、「妙案」、あるいは「息をすること」
※ purity :「清浄」、「清潔」、「潔白」、(言語などの)純正
※ obscurity :「薄暗さ」、「不明瞭」、「難解な箇所」、「無名の人」、「辺鄙な場所」
※ strive :「努力する」
※ put up :「上げる」だが、「Puts me up」だと誰かに持ち上げられている感じ。

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テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
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