286. Time of the Season ふたりのシーズン

Time of the Season ふたりのシーズン : The Zombies ゾンビーズ

 ゾンビーズのセカンド・アルバムからのシングル曲で、本国イギリスよりもアメリカでヒットして3位となり、カナダのチャートでは1位となっています。 でもこの曲がヒットした時、グループは既に解散していました。


Japanese Single
Alubm : Odyssey & Oracle
  オデッセイ&オラクル

Released: November 1968
Written by: Rod Argent (ロッド・アージェント)
Produced by: The Zombies

  ゾンビーズについて:
The Zombies
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 ゾンビーズは1964年のファースト・シングル "She's Not There" がアメリカとカナダで2位(英:12位)、サード・シングルの "Tell Her No" がアメリカとカナダで6位(英:42位)と、本国よりも北米で人気のあったグループです。
 日本では "Whenever You're Ready" というシングルのB面に入っていた "I Love You" という曲を、数年後にカーナビーツというグループが「好きさ、好きさ、好きさ」という日本語の歌にしてヒットさせていました。

 彼らは1967年にレコード会社を移籍して、ビートルズやピンククロイドが使ったアビーロード・ストジオでセカンド・アルバムのレコーディングを始めます。 でも途中でスタジオが使えなくなったり、レコーディング中にメンバー間の関係が悪化して、アルバムの完成とほぼ同時にバンドは解散してしまいました。
 しかしアメリカ側のレコード会社CBSコロンビアのプロデューサーであったアル・クーパーがこの曲を気に入り、アメリカでシングル・カットしたところ翌年大ヒットしたという経緯(いきさつ)があります。

 アルバムのタイトル "Odyssey & Oracle" (オデッセイ&オラクル)の「オデッセイ」はホメロスの「オデュッセイアー」(オデュッセウス物語)の英語読みで「長途の旅」という意味にもなり、「オラクル」はギリシャ時代の「神託」(神のお告げ)のことです。  サイケデリック なジャケットも含めて現在では再評価されているようですが、発売当時はアメリカのアルバム・チャートで95位になったくらいでした。 もしアル・クーパーがプッシュしてくれなかったら、アメリカでは発売されない決定が出ていたとか。

 この曲は今でもコマーシャルなどに使われてゾンビのごとくよみがえってきますが、残念ながら歌詞の方は大した内容ではありません。 彼らはタートルズ同様おふざけで写っている写真が幾つかあり、そのふざけたグループ名によってもかなり損をしているのではないでしょうか。 もう少し考えて名前を付けていたら、と思うのですが・・・
 この曲のシングルはステレオ・ヴァージョンですが、オリジナルのマスターはモノラルだったらしく、後からモノラルでミックスし直したバージョンがアルバムのボーナス・トラックとして収められています。 はっきり言って大した違いは無い様に思えるのですが、こだわる方は聴き比べてみて下さい。
→ Time of the Season: モノラル・ヴァージョン (Monaural Version)

Time of the Season 『ふたりのシーズン』を聴く: (3:12 Single Stereo Version)
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

It's the time of the season.   今がその うってつけの季節
When love runs high.   愛が 高まる時 ※
And this time,    そして 今度こそ ※
give it to me easy.   ぼくにスンナリ やらせて欲しい 
And let me try   ぼくに やらせておくれ ※
with pleasured hands.  この歓びに燃える 両の手で ※

To take you in the sun to   きみを日の当たる場所へと 連れていこう
(promised lands).    (約束の地へ) ※
To show you every one.   きみに全てを 見せるために
It's the time of the season for loving.   今が愛するのに 最適な季節だから

What's your name?    きみの名前は何ていうの?
(What's your name? )   (名前は何?)
Who's your daddy?   きみの父さんは誰だい?
(Who's your daddy?)    (父さんは誰?)
(He rich?)      (彼は金持ち?)
Is he rich like me.  彼はぼくみたいに 金持ちかい?
Has he taken,    彼は してくれるかい?
(Has he taken)   (彼は してくれる?)
any time.   いつでも
(any time)   (いつでも)
(To show)    (教えよう) 
To show you what you need to live.  きみが生きるために必要なことを教えよう

Tell it to me slowly   ゆっくりと 話してくれないか
(tell you what).   (きみの言いたいことを)
I really want to know.   ぼくは本当に知りたいんだ
It's the time of the season for loving.   今が愛するのに 最適な季節だということを

(間奏)

What's your name?    きみの名前は何ていうの?
(What's your name? )   (名前は何?)
Who's your daddy?   きみの父さんは誰だい?
(Who's your daddy?)    (父さんは誰?)
(He rich?)      (彼は金持ち?)
Is he rich like me.  彼はぼくみたいに 金持ちかい?
Has he taken,    彼は してくれるかい?
(Has he taken)   (彼は してくれる?)
any time.   いつでも
(any time)   (いつでも)
(To show)    (教えよう) 
To show you what you need to live.  きみが生きるために必要なことを教えよう

Tell it to me slowly   ゆっくりと 話してくれないか
(tell you what).   (きみの言いたいことを)
I really want to know.   ぼくは本当に知りたいんだ
It's the time of the season for loving.   今が愛するのに 最適な季節だということを


※ runs high: ~が高まる。
※ this time: 今度こそ、今回は。 (前回は駄目だったのでしょう)
※ let me try: 私にやらせて、ぼくにさせて。
※ pleasure: (性的な)享楽、歓び。 
※ promised land: 約束の地。 聖書ではカナンのこと。 天国。(これもセックスの快楽に掛けているのでしょう)


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285. San Francisco 花のサンフランシスコ

San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair) 花のサンフランシスコ 
    : Scott McKenzie スコット・マッケンジー

 1967年6月に行われたモントレー・ポップ・フェスティバルをプロモート(宣伝、促進)するため、その一月前にリリースされたこの曲は全米4位のヒットとなり、多くの若者たちをカリフォルニアへと集めることになりました。 この曲は英国を始め、アイルランド、ドイツ、フィンランドなどのチャートで1位となっています。


Alubm : San Francisco
  花のサンフランシスコ
(試聴可)
Released: 13 May 1967
Written by: John Phillips (ジョン・フィリップス)
Produced by: John Phillips & Lou Adler (ルー・アドラー)

  Scott McKenzie について:
Scott McKenzie
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 Monterey Pop Festivalモントレー・ポップ・フェスティバル)のアイディアはその前年に行われた「モントレー・ジャズ・フェスティバル」を観て思いついたということで、ジョン・フィリップス(ママス&パパス)と、プロデューサーでダンヒル・レコードのオーナーでもあった(過去形)ルー・アドラーが中心になって開催されました。 この曲はその二人がプロデュースしたもので、歌っているスコット・マッケンジーはジョン・フィリップスの友人ということです。
 "Be Sure to Wear Flowers in Your Hair" (きみの髪に花を飾るべきだ)という長い副題が付いているのは、同名の別の曲と区別するためとか。

●この曲の時代背景: ベトナム戦争とフラワー・ムーブメント
 当時あれほどヒットしながら現在ではほとんど聴かれなくなっているこの曲は、「髪に花を飾る」とか「love-in」という言葉が出てきますが、現代の若い人には何のことか分からないでしょうから少し解説しておきます。
 1965年にアメリカが北ベトナムを爆撃して以来泥沼化していた「ベトナム戦争」に対し、アメリカ国内では『武器ではなく、花を』―をスローガンに掲げた若者たちの反戦運動が各地で起り、「Love and Peace」(愛と平和)の象徴として髪や体に花を飾る ヒッピー と呼ばれる若者たちが様々な形の集会を開いていました。

 モントレー・ポップ・フェスティバルはその年 「Summer of Love」 と呼ばれたヒッピー・ムーブメントの一つとなり、三日間で延べ20万人を動員する一大イベントとなりました。 コンサートの最終日には主催者の一人であるジョン・フィリップス率いるママス・アンド・パパスがトリを務め、終わりの方でスコット・マッケンジーが加わってこの曲を歌っています。 そしてこの曲はヨーロッパの反戦集会などでも歌われるようになり、翌年チェコスロヴァキアで起こった「プラハの春」における若者たちの集会でも広く歌われたそうです。
 
 ベトナム戦争が終結してからヒッピー文化やフラワー・ムーブメントも衰退し、その理想は幻影に終わったように見えるかもしれませんが、武器を持たない若者たちが武器の代わりに花で髪を飾り、愛と歌の力だけで世界を変えようとしていた時代が確かにありました。 今から44年も前のことです。 

  John Phillips (ジョン・フィリップス): guitar
  Joe Osborn (ジョー・オズボーン): bass
  Hal Blaine (ハル・ブレイン): drums
  Gary L Coleman (ゲーリー・L・コールマン) : orchestra bells and chimes

※この曲にはモノラル・ヴァージョンと、右からギター、左からドラムの音が聴こえるステレオ・ヴァージョンがあり、当時のシングル・レコードはモノラルでした。

San Francisco 『花のサンフランシスコ』を聴く: (3:00 Stereo Version)
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

If you're going to San Francisco  もしきみが サンフランシスコへ行くなら
Be sure to wear some flowers in your hair  花を少し 髪に飾るといい ※
If you're going to San Francisco  もしきみが サンフランシスコへ行くなら
You're gonna meet some gentle people there  そこで平和を望む人たちと出会うだろう ※

For those who come to San Francisco  サンフランシスコに来る人たちのために
Summertime will be a love-in there  夏には「ラヴ・イン」(愛と平和)の集会がある ※
In the streets of San Francisco  サンフランシスコの通りでは   
Gentle people with flowers in their hair  髪に花を飾った 平和主義の人たちがいるから

(Bridge)
All across the nation   この国 全体に渡って
such a strange vibration  なんて不思議な 感情が ※
People in motion   人々は (愛と平和の)運動をしている ※
There's a whole generation   それは あらゆる世代を通じて
with a new explanation   新しい意味のあること
People in motion   みんな (愛と平和の)運動をしている
people in motion   みんな (愛と平和の)活動をしている 

For those who come to San Francisco  サンフランシスコに来る人たちのために
Be sure to wear some flowers in your hair  きみの髪に 花を少し飾るといい
If you come to San Francisco   もしきみが サンフランシスコへ来るなら
Summertime will be a love-in there  夏には「ラヴ・イン」の集会がある

If you come to San Francisco   もしきみが サンフランシスコへ来るなら
Summertime will be a love-in there  夏には「ラヴ・イン」の集会があるから


※ be sure to..: 必ず(きっと)~しなさい、~するように気を付けなさい。
※ gentle people: 非暴力主義の人たち。 (「優しい人びと」ではありません)
※ love-in: 「ラヴ・イン」。ヒッピーの集会(be-in)で、すべてのものを愛することをテーマにしたもの。この年の6月に行われたモントレー・ポップ・フェスティバルは "Summer of Love" とよばれた若者文化のムーブメントの一つとなった。
※ vibration: [米俗] (雰囲気などから起きる)感情、気持ち。 この部分、全て語尾が"-tion" で終わる単語を続けて韻を踏んでいる。
※ in motion: 運動中である、運動をしている。 「Love and Peace」(日本では「ラヴ・ピース」)運動のことでしょう。


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284. So Much in Love ソー・マッチ・イン・ラヴ (なぎさの誓い)

So Much in Love ソー・マッチ・イン・ラヴ (なぎさの誓い) : The Tymes ザ・タイムズ

 ザ・タイムズのデビュー・シングルにして、全米No.1 のヒットとなった彼らの代表曲です。 アカペラで指を鳴らすだけで歌えるので、歌詞を覚えるとどこでも気軽に口ずさめるでしょう。


So Much in Love (LP)
Alubm : Best of The Tymes
  Great Soul Hits

Released: 1963
Written by: George Williams, Bill Jackson, Roy Straigis
Produced by: Billy Jackson

  The Tymes について:
The Tymes
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 Tyme は Time の古い書き方ですが、The Tymes は元 The Latineers というグループのメンバーだった4人に、 George Williams (ジョージ・ウィリアムス)をリード・ヴォーカルに迎えて1960年に結成されました。 この曲はその George Williams と、プロデューサーの Billy Jackson (ビリー・ジャクソン)、アレンジャーの Roy Straigis の三人の共作となっています。

 彼らは同年に、 Johnny Mathis (ジョニー・マティス)が1957年に歌った "Wonderful! Wonderful!" のカヴァー曲が全米7位になったくらいでその後ビッグ・ヒットは無いものの、地道に活動を続けていたようです。
 1975年の "Ms Grace" (ミス・グレイス)という曲はアメリカでは91位と振るわなかったものの、英国のシングル・チャートでは1位の大ヒットとなりました。

 この曲のシングルは2分08秒と短く、波の音の後ですぐに歌が始まるのですが、探してみると幾つかの異なるヴァージョンがあるようです。 たぶんLPヴァージョンとか再録ヴァージョンなのでしょうが、イントロにチェレスタの音色とナレーションが入る少し長いヴァージョンがあり、その中でも歌詞が同じもの(2:21)と、1番の歌詞が違うもの(2:27)がありました。

●カヴァー・ヴァージョン:
 この曲は何人かの人がカヴァーしていますが、1982年に Timothy B. Schmit (ティモシー・B・シュミット)が "Fast Times at Ridgemont High" (初体験/リッジモント・ハイ)という映画のサウンド・トラックの中で歌っています。→ Timothy B. Schmit の歌を聴く:
 この映画のサントラの主題歌を歌っているのはジャクソン・ブラウンですが、他にもドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ドン・フェルダーと、同じイーグルスのメンバーが参加しています。 ポコもいますね・・・

 1988年には Art Garfunkel (アート・ガーファンクル)もカヴァーしてアダルト・コンテンポラリー・チャートで11位のヒットになっていますが、残念ながら Grooveshark では探しても曲が見つかりません。

 1993年暮れには The All-4-One というヴォーカル・グループがデビュー・シングルでこの曲を歌い、翌年のUSチャートで5位のヒットとなっています。→ The All-4-One のヴァージョンを聴く: 


So Much in Love 『』を聴く: (2:08 Single Version)
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

As we stroll along together   ぼくらが一緒に 散歩しながら ※
Holding hands, walking all alone  手をつないで、二人きりで歩く ※
So in love are we two   ぼくら二人は 深く愛し合っているから ※
That we don't know what to do  どうしていいか 分からなくなるんだ ※
  ※別の歌詞:(No one else but me and you  ぼくときみ以外、誰もいないみたいだ) 
So in love   それほど 愛し合っているから
(so in love)
In a world of our own   自分たちしか 見えないんだ ※
(so in love)

As we stroll by the sea together  二人して 渚(なぎさ)を歩く ※
Under stars twinkling high above  星のまたたく 空の下を ※
So in love are we two   ぼくら二人は 深く愛し合っているから
No one else but me and you  ぼくときみ以外、誰もいないみたいだ ※
So in love   それほど 愛し合っているから
(so in love)
So much in love    熱々の 恋人同士だから ※
(so in love)
So in love   深く 愛し合っているから
(so in love)
So much in love   熱々の カップルだから
(so in love)

(Bridge)
We stroll along together   ぼくらが 一緒に歩きながら
I tell you,    ぼくがきみに、
"I need you, oh, so much  「きみが必要なんだ、あぁ、こんなにも
I love, love you my darling"  愛してる、 愛してるんだ、ぼくの愛しい人」と言ったら
Can you tell it in my touch?  きみもぼくの腕の中で そう言ってくれるかい?

When we walk down the aisle together  二人して (教会の)通路を並んで歩く時 ※
We will vow to be together till we die  「ぼくらは 死ぬまで一緒だ」と誓おう
So much love have we two    ぼくら二人は 深く愛し合っているから
Just can't wait to say "I do"   「はい」と言ってくれるのが とても待ちきれない ※
So in love     深く 愛し合っているから
(so in love)
Are you and I    きみとぼくは
(you and I)
So in love     とても 愛し合っているから
(so in love)
Are you and I    きみとぼくは
(you and I)
So in love    深く 愛し合っているから
(so in love)
Are you and I..    きみとぼくは・・・
(you and I)


※ stroll along: ~沿いを歩く(散歩する、ぶらつく)。
※ holding hands: 手をつなぐ。
※ all alone: 「ただ一人で」とか「独力で」という意味ですが、その前に "together" があるので、"together all alone" だと「二人きりで」となります。
※ so in love: 深く愛し合っている。
※ don't know what to do: どうしていいか(何をしていいか)分からない。 この行、二番と同じ "No one else but me and you" となっているヴァージョンもあります。
※ in a world of one's own: 自分(たち)の世界に入っている(没頭している)。自分のことしか考えられない。

※ stroll by the sea: 海辺を散歩する。
※ high above: 高いところにある(位置する)。
※ no one else but..:~以外、誰もいない。
※ so much in love: かなりお熱い仲、熱々の恋人同士。

※ aisle [発音:ail]: (座席と座席の間の)人が通れる部分、通路。 この場合は教会(結婚式)の通路でしょう。
※ I do: 「はい」とか「ええ」とか「もちろん」。 "Yes, I do" ということです。
 

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282. When a Man Loves a Woman 男が女を愛する時

When a Man Loves a Woman 男が女を愛する時 : Percy Sledge パーシー・スレッジ

 パーシー・スレッジが最初に録音したこの曲は全米とカナダでNo.1 となり、彼にとって最大のヒットとなりました。 そしてこの曲はアトランティック・レコードにとっても初のゴールド・レコードとなっています。


Japanese EP
Alubm : Best of Percy Sledge
  The ultimate collection

Released: April 16, 1966
Written by: Calvin Lewis, Andrew Wright
Produced by: Marlin Greene, Quin Ivy (クイン・アイヴィー)

  Percy Sledge について:
Percy Sledge
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 1941年にアラバマ州ライトンで生まれたパーシー・スレッジは、高校時代は野球選手として活躍していましたが、歌や野球で生活できる訳もなく、しばらくはブルー・カラー(労働者)の仕事をしていたようです。 しかし1965年の終盤になって建築現場の仕事を解雇され、恋人も離れていってしまうという二重苦を味わい、その時の体験がこの曲の歌詞には色濃く反映されています。

 その後シェフィールドの病院の用務員としての仕事を得た彼は、週日は病院で働きながら、週末は The Esquires Combo (エスクァイアーズ・コンボ)という地元のグループと共に南部の地方を回りながら歌い始めます。 この曲のクレジットにある Calvin Lewis(カルヴィン・ルイス)と Andrew Wright(アンドリュー・ライト)はベースとキーボードを担当していたグループのメンバーとか。
 そんなパーシー・スレッジにとって転機となったのは、病院にやって来た患者の中にこの曲をプロデュースすることになる Quin Ivy (クイン・アイヴィー)がいたことで、両者を共に知っている人の紹介で彼はオーディションを受け、アトランティックとレコード契約を交わします。

 音楽プロデューサーのクイン・アイヴィーはメンフィスで DJ の仕事をしながら、マッスル・ショールズ・スタジオの Rick Hall (リック・ホール)のところでソング・ライターの仕事などもしていました。 彼はリック・ホールがやらない小さな仕事をもらう目的で、1965年に Quinvy recording studio (クインヴィ・レコーディング・スタジオ)という小さなスタジオを開設します。 そしてレコーディングに際してリック・ホールから、プロデューサーでギタリストでもある Marlin Greene (マーリン・グリーン)を紹介してもらい、その頃マッスル・ショールズでの仕事がなかった優れたミュージシャンたちを集めてレコーディングされたのがこの曲でした。

参加ミュージシャン:
  Spooner Oldham (スプーナー・オールダム) : Organ
  Marlin Greene (マーリン・グリーン) : Guitar
  Albert "Junior" Lowe (アルバート "ジュニア" ロゥ) : Bass
  Roger Hawkins (ロジャー・ホーキンス) : Drums

 レコーディング当初この曲にはまだ歌詞がなく、パーシー・スレッジがアドリブで歌詞を付けながら歌っていたそうですが、カルヴィン・ルイスとアンドリュー・ライトが曲作りに貢献したということで、スレッジはクレジットの権利を二人に与えました。 彼の名前がクレジットされていないのはそうした理由からで、歌詞に幾つか違うヴァージョンがあるのはその時文字として書き残さなかったからだと思われます。 レコーディングが1966年の2月とすると、恋人と別れてからまだそんなに日が経っていない訳で、歌の中から恋する者の苦悩がにじみ出してくるようです。

 パーシー・スレッジとクイン・アイヴィーのコンビはこの後も1969年までに U.S. Hot 100 に入るヒットを10曲以上出しているのですが、残念ながらトップ10に入る曲は一つもなく、どうしてもこの曲のイメージが付いて回るのは仕方の無いことでしょう。

●カヴァー・ヴァージョン:
 この曲は色々な人が歌っていますが、25年後の1991年に Michael Bolton (マイケル・ボルトン)が歌ったヴァージョンが再び全米で1位となっています。 両者を聴き比べてみると「ソウル」と「ポップス」の違いが分かるだけでなく、万人受けするものには灰汁(あく)が無いことも良く分かるでしょう。
→ When a Man Loves a Woman:Michael Bolton (マイケル・ボルトン)のヴァージョン

 Bette Midler (ベット・ミドラー)も1980年の映画 "The Rose" (ローズ)の中で熱唱していますが、残念ながら Grooveshark には曲が無いみたいでお聴かせすることができません・・・

 パーシー・スレッジのベスト版には1曲目にオリジナルの古いヴァージョン、アルバムの一番最後にアトランティックのジェリー・ウェクスラーが録り直した新しいヴァージョンが収録されているので、興味があれば聴き比べてみて下さい。→ When a Man Loves a Woman (Original Version)

When a Man Loves a Woman 『男が女を愛する時』を聴く: (Alternate Version)
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

When a man loves a woman,   男が女を愛する時
Can't keep his mind on nothin' else,   彼は他のことを 何も考えられなくなる
He'll trade (change) the world   彼は 世界とだって交換するだろう ※
For the good thing he's found.   彼が見つけた その素晴らしい人と

If she is bad, he can't see it,  もし彼女が悪いとしても、 彼にはそれが分からない
She can do no wrong,   彼女が悪いことなど するはずがないから ※
Turn his back on his best friend   彼は親友にだって 背を向けるだろう
If he put her down.  もしその友だちが 彼女のことを悪く言ったなら ※

When a man loves a woman,   男が女を愛する時
Spend his very last dime   なけなしの金を 全てはたいても ※
Tryin' to hold on to what he needs.  大切な人を 手放すまいとするだろう ※

He'd give up all his comforts   彼は あらゆる快適さを捨て去って
Sleep out in the rain,   雨の中で 眠ることだってするだろう
If she said that's the way   もし彼女が 「そうしなさい」と言ったなら ※
It ought to be.    きっと そうすることだろう ※

Well, this man loves you, woman.  そう、この男は(そんな風に) きみを愛してるんだ、
I gave you everything I had,  ぼくは 自分の持てる全てをきみに捧げた
Tryin' to hold on to your hot blood long.  きみの情熱をずっとつなぎ止められるように ※
Baby, please don't treat me bad.  ベイビィ、どうか冷たくしないでおくれ ※

When a man loves a woman,   男が女を愛する時
Down deep in his soul,   彼の心の 奥底を
She can bring him such misery.  彼女は これほど惨めにすることもできる

If she is playin' him for a fool,  もし彼女が 彼をもてあそんでいるとしても ※
He's the last one to know.   彼には最後まで それが分からないだろう
Lovin' eyes can never see.    愛する者の目は 盲目だから

When a man loves a woman   男が女を愛する時
he can do her no wrong,   彼は彼女に対して ひどいことができない
he can never own some other girl.  彼は他の娘を 自分のものにはできないだろう

Yes, When a man loves a woman  そう、男が女を愛する時
I know exactly how he feels,  ぼくには その男の気持ちが良く分かる
('Cause) baby, baby, baby,    (だって)ベイビィ、ベイビィ、
you're my world.  きみは ぼくの世界(そのもの)だから

When a man loves a woman   男が女を愛する時
I know exactly how he feels...  ぼくには その男の気持ちが痛いほど分かるんだ・・・


※ この部分、"change" となっているヴァージョンと、 "trade" となっているヴァージョンがあります。
※ can do no wrong: 悪いことは何もできない、悪いことをするはずがない、何をしても正しい。
※ put down: こき下ろす、けなす、悪口を言う、恥をかかせる。
※ very last: 最後の最後の、本当に最後の、ギリギリの~。
※ dime: 10セント硬貨の愛称ですが、現在では10円の価値もありませんから、あくまでも「たとえ」で、「最後の10円までも」くらいのニュアンスです。
※ hold on to: ~をつかんで離さない。~を手放さない。~にしがみつく。

※ that's the way: この場合は「そのようにやれ」とか「そうしなさい」(と命令されたやり方)。 普通は「そんなもんさ」とか「そういうものだ」くらいの使い方。
※ ought to be: きっと~だろう、 ~するはずだ。
※ hot blood: この場合は「情熱」とか「熱情」と解釈しています。「短気」や「癇癪」という意味もありますが、マイケル・ボルトンやベット・ミドラーのカヴァーでは「precious love」と置き換えてあるので、あまり良い表現ではないのかもしれません。
※ treat someone bad: ~にひどい仕打ち(扱い)をする。
※ play someone for a fool: ~をからかって(ばかにして)いる。 この場合は「男の心をもてあそんでいる」としておきました。


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281. The Dark End of the Street ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート

The Dark End of the Street ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート : James Carr ジェイムス・カー

 ジェイムス・カーの代表曲の中で、おそらく一番人気があるのがこの曲でしょう。 当時のビルボードのブラック・チャートで10位、ポップ・チャートでは77位と大したヒットにはなりませんでしたが、現在に至るまで多くのミュージシャンにカヴァーされている名曲の一つです。


'87 Compilation Alubm
Alubm : You Got My Mind Messed Up
  Goldwax Singles

Released: 1967
Written by: Dan Penn, Chips Moman
Produced by: Quinton Claunch, Rudolph Russell

  ジェイムス・カーについて:
James Carr
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 私が初めてこの曲を聴いたのはライ・クーダーのサード・アルバム "Boomer's Story"/「流れ者の物語」(1972年)に収められていた インストゥルメンタル・ヴァージョン でした。 楽曲だけで歌詞はなく、曲のタイトルからイメージを膨らませていたのですが、かえって様々な情景が浮かんできたものです。
 この曲はその後ライヴ・アルバムの "Show Time"/「ショー・タイム」(1977年)でも再び採り上げていますが、その時はボビー・キングやテリー・エヴァンスらのコーラス隊に歌わせていました。

 ライ・クーダーは "The Slide Area"/「スライド・エリア」(1982年)というアルバムでもジェイムス・カーの曲、"That The Way Love Turned Out For Me" (邦題:「愛とはいつもこんなもの」)を採り上げています。 もっともアレンジはガラッと変えて切ないバラードに作り変えているので、とても同じ曲とは思えないかもしれません。 ライ・クーダーの音楽は、当時ロック寄りの曲ばかり聴いていた私に、色々な音楽やミュージシャンを紹介してくれることになりました。

曲について:
 この曲は "Muscle Shoals Sound Studio"(マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ)のソング・ライターである Dan Penn (ダン・ペン)と Chips Moman (チップス・モーマン)の二人によって書かれました。 「チップス」というのはもちろんニックネームで、モーマンはフィル・スペクターの "Gold Star Studio" でギタリストをやっていたこともあるとか。 
 二人は1966年にメンフィスで開催されたDJ(ディスク・ジョッキー)会議でフロリダのDJ ドン・シュレーダーとトランプをしていて(一体どんな会議だ?)、その休憩時間にこの曲を30分ほどで書いたそうですが、意外なのはこの曲を書いた二人が白人であるということ。
 これは不倫の歌で、してはいけない恋をしている二人がいつも隠れて会う「通りの外れにある暗がり」が曲のタイトルになっています。 この曲は多くの人の心に響くようで、これまでに様々な人たちによってカヴァーされ、歌い継がれてきました。 どれが良いというより好のみの問題もありますから、Grooveshark で聴ける曲にはアーティスト名にリンクを貼っておきましたので、聴き比べてみると新しい発見があるかもしれません。

カヴァー・ヴァージョン:
*Aretha Franklin (アレサ・フランクリン): 1970年のアルバム "This Girl's in Love with You" に収められているヴァージョンです。 「クイーン・オブ・ソウル」や「レディ・ソウル」の異名を持ち、オーティス・レディングと共にサザン・ソウルの隆盛に貢献した人ですが、この人が歌うとどんな曲でも自分の歌になってしまいます。
*Percy Sledge (パーシー・スレッジ): このヴァージョンは2006年のイギリス映画 "This Is England" で使われたそうです。
*Ry Cooder (ライ・クーダー): 先にも触れましたが、インストゥルメンタルで歌はありません。 ギターの名手の演奏をお楽しみ下さい。
*The Flying Burrito Brothers (フライング・バリット・ブラザーズ): グラム・パーソンズが「バーズ」を脱退後に結成したグループです。
*Gram Parsons (グラム・パーソンズ): そのグラム・パーソンズがソロ名義で歌っている、これはライヴ・ヴァージョンです。
*Linda Thompson and Richard Thompson (リンダ&リチャード・トンプソン): 元フェアポート・コンヴェンション(Fairport Convention) のリチャード・トンプソンと奥さんのリンダによるライヴ・ヴァージョンです。
*Linda Ronstadt (リンダ・ロンシュタット): ロックしていた頃のイメージとはだいぶ違いますが、元々ジャズやフォーク・ロックやカントリー・ロックなどがベースになっている人だけに、意外と良いです。
*Elvis Costello (エルビス・コステロ): この人はパンク調の曲をやったり、かと思うと "She"(シー)のような曲をヒットさせたりしてもいます。

 他にも、Frank Black (フランク・ブラック)、Joe Tex (ジョー・タックス)、それに Porter Wagoner and Dolly Parton (ドリー・パートン)が1968年の "Just the Two of Us" というデュエット・アルバムで歌っています。 (ドリー・パートンの方は声が可愛すぎますが・・・)

 Grooveshark では曲が見つかりませんでしたが、Bruce Springsteen (ブルース・スプリングスティーン)や The Allman Brothers Band (オールマン・ブラザース・バンド )も歌っているようです。
 最近では2008年に Cat Power (キャット・パワー)こと Chan Marshall (ショーン・マーシャル)が、その名も "Dark End of the Street" というEPアルバムで採り上げています。 こうした若い人が歌うことで、新しい世代にもかつての名曲が受け継がれて行くのでしょう。


The Dark End of the Street 『ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート』を聴く:
(※開くまでに時間がかかりますが、のんびりお待ち下さい。 しばらくすると、自動的に再生が始まります)

  ●歌詞と対訳●

At the dark end of the street   通りの外れにある暗がり
That's where we always meet   そこは俺たちが いつも会うところ
Hiding in shadows where we don't belong  居てはいけない場所で 物影に隠れ ※
Living in darkness to hide our wrong   二人の過ちを隠すために 暗がりで生きる

You and me   お前と俺は
At the dark end of the street   通りの外れにある暗がりにいる
You and me   お前と俺

I know time is gonna take its toll   時は 大きな犠牲を強いるだろう ※
We have to pay for the love that we stole  俺たちはいずれ 奪った愛の代価を支払わねば
It's a sin and we know it's wrong   それは罪なことで、過ちだと分かっているから
Oh, but our love keeps coming on strong  でも俺たちの愛は 強くなるばかり ※
Steal away to the dark end of the street  通りの外れの暗がりで (人から)盗んだ愛だけど ※
Oooooh...

They're gonna to find us   いずれ 俺たちは見つかるだろう
They're gonna to find us    彼らは 俺たち(の不倫の現場)を見つけるだろう
They're gonna to find us   いずれ 俺たちは見つかるだろう
Lord, someday     あぁ、いつの日か ※

You and me    お前と俺を
At the dark end of the street   通りの外れにある暗がりにいる
You and me   お前と俺を

And when the daylight hours roll round   そして 明るい昼の時が巡って来て、 ※
And by chance we're both downtown  偶然二人が ダウンタウン(繁華街)で
If we should meet    もし俺たちが 出会ってしまったとしても
Just walk on by   ただそのまま (黙って)通り過ぎることにしよう
Oh, darling, please don't cry   あぁ、ダーリン、 お願いだから泣かないでくれ

Tonight we'll meet   今夜 俺たちは会おう
At the dark end of the street   通りの外れにある暗がりで
Oooooh...


※ don't belong: 「居るべき場所でない」とか「居心地が悪い」ですが、"don't be long" (長く居られない)となっている歌詞もあります。 "belong" と "wrong", "strong" で韻を踏んでいます。
※ take its toll: 大損失(大被害)をもたらす、大打撃を与える、死者(犠牲者)を出す、人命を失わせる。 これも "toll" と次の "stole" で韻を踏んでいます。
※ coming on strong: 強くなってきている。
※ Steal away: (こっそり)盗み取る。
※ Lord: この場合は単に「あぁ」とか「おぉ」といった感嘆詞で、無理に「主(しゅ)」と結びつけることもないでしょう。
※ roll around: (月日や季節が)巡って来る、近づく。
※ by chance: 偶然、たまたま。
※ walk on: 歩き続ける。


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テーマ : 洋楽歌詞対訳
ジャンル : 音楽

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昨年まで老母の介護をしていました。 古い記事へのコメントも大歓迎です。
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